アンコール・トムから東方約500mにあるトマノン寺院は、12世紀の初め、スールヤヴァルマンII世によって建てられたヒンドゥ教寺院である。ここは小規模ながら大変綺麗なデバター（女神）が残っていることで知られる。

　デバター（女神）の表情は穏やかで美しく、唇の紅がかすかに残っているのが印象的だった。

　トマノン寺院の東500mに建つタ・ケオ寺院は、11世紀初頭にジャヤヴァルマンV世によって建立されたヒンドゥ教寺院である。王の突然の死亡により、未完成のまま放置されたという。

　建設途中に落雷があり、それが神の祟りと恐れられて工事を取り止めたとも伝えられる。壁面彫刻が一切ないことから、クメール人たちは、建物を建てた後で彫刻を施すことが判明した。

東バライ　　East Baray

東メボン寺院　　East Mebon

　かつてこの大池・東バライの中央に浮かぶように建っていた東メボン寺院は、952年にラージェンドラヴァルマンII世によって建立されたヒンドゥ教（シヴァ派）のビラミッド型寺院である。

　この寺院の特徴は、クメール建築の三大建材である砂岩、ラテライト（紅土）、煉瓦が適所に使い分けられ、変化に富んだ構造となっていることである。写真下の基壇は、ラテライトで造られたもの。

　東メボン寺院の南方1.5kmに建つプレ・ループ寺院は、961年にラージェンドラヴァルマンII世によって建立されたヒンドゥ教（シヴァ派）のピラミッド型寺院である。プレ・ループとは「体を変える」という意味で、ここで火葬が行われていたのに由来するという。

　プレ・ループ寺院は、東メボン寺院よりも規模が大きく、ラテライト（紅土）で築かれた基壇の三層目の四隅にそれぞれ祠堂（しどう）が配置され、その中央に二段の小さな基壇があり、その中心に中央祠堂が建っている。

　中央伽藍（がらん）と東塔門の間に死者を荼毘（だび）に付した石槽が置かれ、火葬の儀式が行われていたという。