KF読者各位
26日(月)15時半頃、型枠大工の62歳のオヤジ兄のほうが(新発田ペアで、背格好も双子の兄弟みたい)が、夜勤の準備で起き出して来て、「丹下さん、仙台でまた大地震だ。火災も発生しているようで、夕方だから大変になりそうだよ!」と事務所に報告に来てくれました。食堂のテレビで確認したら、揺れの状況が、丁度写し出されていました。一瞬、阪神大震災レベルの被害になるのか・・の思いが頭を過ぎりましたが、その後、被害がそうでもないニュースが徐々に流れて来て、心底、ほっとしました。津波もなく、被害も最小で、本当に良かったです。
宮城県沖地震(1978)では、ブロック塀の倒壊現場を、学生の眼で、何軒も見てますので、イメージがすぐ過去に飛びました。日本は地震国なので、日本勤務もつらいですよね。
さて、現場運営編、これが最後の1本です。21年、建設会社で仕事して、うち15年が現場ですが、25本で全部というのは、なんか情けないですが、現場の事務担当の仕事なんてのは、日常の繰り返しで、まあこんなもんかもしれません。
私は、現場事務所の入り口にアドミ席を陣取って、手元の6名のインド人を各方面に蒔いて彼らが不在の時は、受付と電話番と配車係と弁当屋もやっているのですが、今朝なんか、こんな調子でした。
「マーカーペンある?」「油性、ホワイトボード用、どっち?」「油性!」「はい、じゃあ、こちらね」「両替して!」「なんぼね?」「2万円」「じゃあ、0.3815のホテルレートで、7630ルピーね。」「ズボンの股が破れた。」「はい、じゃあ、そこ置いといて下さいね(新発田のオヤジ弟には敬語)。縫わしときます。」「エクササイズデューティーって何ですか?」「蔵出し税で、16%よ。」「老眼鏡、日本に置いて来た。」「じゃあ、家に電話して、この名刺の住所に送っとくように。わしが、6月の休暇で取って来ますから。」「昼飯、事務所で喰います。」「じゃあ、弁当キャンセルしとくね。」「この伝票で払っといて」「じゃあ、サインを金額の下にしといて!」「部屋の電球が切れた。蛍光灯のほう。」「じゃあ、昼間にチューブ、変えときますね。」「ビール券とジュース券、頂戴」「はい、合計580ルピーです。」「トイレが詰まりました。」「流れんの?」「なんとか流れます。」「じゃあ、あとで、スタッフにやらせるからね。」「現場事務所まで、ドロップオンリーで車あります?」「じゃあ、タタのスモウの白で走ってね。すぐ返すように。」「この給与明細の引き去りが分からんのだけど」「じゃあ、ちょっと本社にメールで聞いとくね。返事は晩ね。」と、こんな状態が、始業時の60分間ぐらい、朝の6時から7時ぐらいの間に続きます。
44歳にもなって、こんなことを、インドで一日やっていて、良いのだろうか??の疑問も過ぎらない訳ではないですが(椎名誠の、「インドでわしも考えた」の世界ではないですが)、まあ、ここは、現場ですし、目の前の山を越えないことには、明日の山がやって来ないと開き直って、とりあえずは、身体の周りを舞う蚊や蝿を殺し、眼の前に頭を出してくるモグラを叩いて、あるいは、目の前を過ぎる蛇の頭を踏み潰してと・・・まずは、すべて、捌き(さばき)の、初期対応の世界に浸っています。しかし、こんなに頭を使わないで生きてると、歳とってから、大きなしっぺ返しが来るでしょうね、たぶん・・・まあ、いいか。
さあて、毎度のパターンですが、番外編D、締めくくりの最後の5画像。
ソニーのマビカには活躍して貰いましたが、画素がいかんせん少なく、軽いのだけが取り得の画像群でした。だけど、そこがまた、インドの田舎を写すには合っていたように思います。
はい、では、はじまり、はじまり。
1)カワラケ&瓶子(ヘイシ)
インドにも、これらのルーツと思われる素焼きモノがありますが、このカワラケと瓶子は、日本から持ち込みました。VIP(例えば、本部長や支店長)が来られた時には、安全祈願の後、VIPに神主役をお願いして、皆のカワラケに瓶子で、お神酒を注いで頂き、「ご安全に!」のご発声で、全員で献杯する儀式が、うちの現場にはあります。
日本の戦国時代には、出陣の時は、カワラケを割ってから馬に乗って出陣して行ったらしいのですが、毎回、割ってると、その度に日本から持ち込まなきゃなりませんし、掃除も大変なので、おとなしく献杯だけしています。
2)テニスコート
なんせ、山ん中は、退屈します。仕事を瞬間忘れて、気分転換する時間がないと、さすがに肉体も精神も参ってしまいます。で、やっと、コートを、今、作り始めています。コートは、土にしてくれ、芝にしてくれと、当初いろんな希望が出ましたが、どうせすぐ飽きるんだから、飽きれば、また駐車場に出来るコンクリでええやないかの結論で、作り始めました。平面が上手く出せるのかが心配ですが、こまかな事は言ってられません。熱いコートでの暑いテニスになります!
キャンプの外にゴルフの打ちっ放し練習場を作ろうと言う話も、随分前からありますので、このコートが完成したら、取り掛かるつもりです。アプローチ練習場やバンカーも作るつもりですが、蛇とかさそりとかの巣にすぐなりそうです。
3)研修生
なんせ、海外現場勤務は、長くなると、退屈します。お互いが始終顔を合わせてますから、倦怠期の夫婦みたいなもんで(たぶん・・?)、作業所の日々に、新鮮さがどんどんなくなって来る。そうした集団に、右も左もわからん国内の若い小僧を投入したら、どうなるか?、で、海外事務研修生ということで、20代の若者を2名投入して、去年から、半年、試してみました。
これは、半年研修後の日本帰国直前の1期生です。なんか、凛々しいでしょう・・・タージマハールが。
2期生も、7月から4ヶ月、投入されますので、インドの洗礼後の、彼らの日本での成長に期待大です。まずはボロボロになって頂き、そこから這い上がってみて貰いましょう。しっかし、インドは、心底効きますからね、楽しみです!
4)芳名録
うちのような僻地の現場には、周りにホテルなんかが全くないので、ゲストハウスと言う宿泊施設を作ります。うちには、3部屋あります。で、お泊りになられたVIPに、所員に一筆、一コメント書いて頂くようにしています。読み直す気持ちの余裕のある所員はまだおりませんが、現場も終わり方になって読み返すと、作業所の歴史を綴る良い記念の一冊になっていると思います。これも、我らが大澤管理部長からの伝授の技です。
あと、村メイドの素焼きの大壺とか、クリケットのバットとかに、揮毫して貰って、ゲストハウスに並べても飾るのも面白いかもしれませんね。
どうしても日常に流されますので、作業所の歴史を語る品は、所員の間に、必要だと思いますね。
5)海外3点セット
土壇場では、なるたけ、シンプルに。海外を移動する時は、この3点があれば、いけます。パスポートと航空券とクレジットカードの3点セット。3つだから、覚え易いでしょう!
昨年6月の印パ危機でも、30人の所員のインド脱出策は考えざるを得ませんでした。さっと逃げる時は、この3点セットで、十分です。
実際、現金がモノを言う世界が、ドタバタの中では生じてきますが、野盗も増えますので、大金はお奨め出来ません。
はい、以上で、現場運営編、お仕舞です。
4ヶ月インドノンストップで、10日の日本休暇の繰り返しで、早や2年。しかし、身体って、不思議と、慣れるもんです。山の環境が幸いして、俗世間の煩悩からは解脱。これが、街部の工事でしたら、白粉の蝶々も多く、ここまでは集中できんでしょう。やはり、この空気の澄んだ、牛とヤギと羊に囲まれた、西ベンガル環境のなせる業です。
インド4千年の歴史で、工期に間に合った工事はないという冗談伝説に果敢に挑戦する我ら大成建設ですが、終わってみたら、万骨累々とならんようにせにゃあいけません。鬼門の天竺は、最後の最後まで、気が抜けません。
皆さん、株買うなら、インドで事業展開している根性のある日系企業が買いかもしれませんよ。こっそりお教えしますと、ソニーでしょ、スズキに、トヨタに、日清食品、東京海上、それに、大成建設・・・最後の会社は安いけど、将来、大化けするかもしれません。
現場運営編、長らくのご愛読?、ありがとうございました。しばらく、充電して、また、次なる企画で、カワ通、復活させます。
それでは、ごきげんよう!See you again!