さて、カワ通、第4集は、ここまで、妹尾河童さんの、『河童が覗いたインド』の文庫本を、ばらしながら、進めて来ました。ブックオフ社が上場したりと、著作権問題が賑やかな日本ですが、作家の権利を守ることも当然考えねばならず、こうしたページコピーが著作権法に違反することは承知の上で、文庫を出している新潮文庫、講談社文庫さんへは、カワ通で、興味を持ったKF読者が、何人か新刊で買って呉れたかもしれませんので、お赦し頂こうと思います。ちなみに、私も、ばらした新潮文庫1冊は、新刊で買ってます(1冊じゃあ、ダメ?)。本が売れない時代ですからね、作家も大変です!
今回、河童さんのこの素晴らしい旅行記から、最後にばらすことになったのは、インドの鉄道の旅の箇所です。河童さんも、こう書き出しています。「南インドに来た目的がまるで『汽車』に乗ることであったかのように、あちこちで、嬉々として乗った」
この文庫の中には、『鉄道の旅』と『タージ・エクスプレス』の、鉄道二編が組み込まれています。宮脇俊三著「インド鉄道紀行」と同様、鉄道ファンに、この河童さんの本が今も根強い人気があるのは、その鉄道旅行の、車内、車外の詳細画図と、微に入り細に入った文章表現です。列車の振動も伝わってくるようなリアルな文章は、何度読んでも飽きが来ません。
河童さんの説明によると、日本で初めて汽車が走ったのが、明治5年(1872年)で、インドは、さらに19年遡って、1853年で、アジアで最初だそうです。当時の英領インドの位置づけがよくわかります。
私も、先日、カルカッタに出た際に、鉄道写真を撮って来ました。
パンジャブ州では、一度だけ、走っている蒸気機関車を眼にしてますが、カルカッタでは、ディーゼル機関車と、電気機関車がメインで、蒸気機関車は、駅や博物館に、任務を終えて飾られているのしか見たことがありません。
さあて、6枚、ご紹介します。
1)ジャムシェドプールのタタナガール駅のスチール号
ジャムシェドプールは、TATA(タタ)製鉄の街ですので、電気機関車の名前も、Steel Express
と言います。撮影は、夜明けでしたが、朝の6時10分始発で、カルカッタのハウラー駅に向けて、出発します。タタ駅〜ハウラー駅間の約250キロを、4時間半で走ります。
2)スチール号の一等車内
黒服が、車掌さん(Ticket
Checker)で、絶対権力者。煙草を吸うと、100Rsの罰金(Fine)です。飲酒もご法度。赤服は、給仕(Steward)で、ちょうど、プラスチックカップのチャイを販売しています。一等は、ぎんぎんに冷房が効いていて、ビニールシート席で、ハウラー駅まで、260ルピー(650円)。席は、一応、コンピューターで管理されていて、事前予約制です。チャイは、8ルピー(20円)。
3)スチール号の二等車内
スチール号の2等は、ベンチシートですから、おケツが、なかなか痛いです。ぎゅうぎゅうに座ります。隙間に、皆がお尻を詰め込んで来る感じです。ハウラー駅まで、70ルピー(180円)。こちらの車両では、同じチャイが5ルピー(13円)です。
4)スチール号の厨房車(Pantry Coach)
インドの列車脱線事故で、一発で大勢の人が死ぬのは、こうして、揺れる列車の厨房で、ガス火で、油を使って、カツレツを揚げているから。簡単に火災になります。手前から順に、オムレツ(焼き)、カツレツ(揚げ)、トースト(炙り)の調理作業中。
5)ハウラー駅のムンバイ行きのギタンジャリ号
Gitanjali
Expressは、寝台列車です。27両連結ですので、550mぐらいの長さがあります。ハウラー駅を午後1時半に出て、4時間で、タタ駅(ここから、ジープ2時間半で私たちの現場です)。タタ駅からさらに、西に28時間走ると、アラビア海に面したムンバイ(ボンベイ)です。うちの作業所でも、そこまで、寝過ごした猛者は、まだ居ません。
6)ギタンジャリ号からの線路とベンガルの大地
インドは、ブロードゲージと呼ばれている広軌ですから、1676mm(日本の新幹線は、1435mm)。河童さんによると、1000mmのメーターゲージに、さらにあと2種類の狭軌(600mm程度)が、インド鉄道にはあるそうです。インドの列車は、乗り降りドアは、走っていても、自由に開けられますので(違反だけど、簡単に開きます)、途中で飛び降りれば、キセルが可能です(痛いけど、着地の時に)。
以下、インド鉄道ネタを。
@海外現場では、空港から車で、サイトまで直接、人を入れる現場がほとんどだと思います。そのほうが、赴任者が逃亡しないし、事務としては、管理が楽だからです。ところが、うちは、カルカッタ空港で車→ハウラー駅で列車→タタ駅から車で、現場乗り込み時は、この乗り継ぎに、所員が慣れず、大変でした。列車の券も、駅の券売所でインド人たちの行列の中で、買える猛者はまだ何名かで、事前に、乗車券を準備するようにしています(社員に過保護かな?)。
Aうちの現場には、二人のお嬢さんを、ひかりちゃん、のぞみちゃんと名づけている土木社員が居ます。でも、別に、鉄道フェチでも、国鉄関係のお家でもないそうです。
Bハウラー駅〜タタ駅間で、ギタンジャリ号が、途中一回だけ止まる駅が、カラプール駅です。ギネスに世界一プラットホームが長い駅として載っているそうです(と、駅の壁に書かれています)。インドでは、石炭や鉄鉱石の大量輸送で、40両ぐらいの連結はザラですから、このギネス記録というのも、あながち大法螺でもないような気がします。
Cタタ駅から、うちの現場に辿り着くまでに、6つの踏み切りがあり、これに、何回止められるかで、運勢占いするのが、うちの現場の所員のささやかな楽しみです。6回すべて止められると、ケンシロウから、お前はもう死んでいる・・と言われるのです。あたたっ・・・・
Dインドでは、車内で煮炊きをするのは、禁止です。インド人は、携帯コンロで、チャイとか、カレーとか、車内で作りたがりますが、脱線の時に、車両火災に繋がりますので、見つかると罰金です。
私は、別に鉄道ファンではないのですが、インドで仕事をするうちに、鉄道ネタが少し増えました。
うちの会社の海外で働く仲間たちのネットワーク網を作ってみようの意図で配信を始めたカワ通も、海外勤務者には反応は少なく(もう当り前過ぎて?)、むしろ、国内勤務者のほうの受けがよく(明日はわが身?)、しこしこ配信を続けるうちに、脱線に脱線を重ねて、こんなインド通信になって、これで、86本目になりました。
第1集は、笑うインド編、第2集は、ちょっとまじめに、現場運営編、第3集は、天竺職業編、で、この第4集が、河童さんの絵と文章をお借りしての、少年H編でした。
インドで遊んでいると思われるのが、日頃の不徳のなせるわざで、悲しいのですが、第5集も、休暇明けから、再登場させますので(おい、おい、おい、おい、本気かよ〜!)、宜しくお願いします。文章は読まず、インド画像だけを楽しむのが、この駄文通信と、つきあうコツ(Knack)です。
以上で、少年H編、完です。
4ヶ月に渡り、笑門来福に、ご協力頂き、ありがとうございました。
皆さんからの返信が、嬉しかったわ。