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2004年6月13日改訂

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2003年11月21日作成

仏陀杉

仏陀杉(屋久島/鹿児島県

屋久島の森へ(前編) 屋久島の森へ(後編)

ジェットフォイルとっぴー(飛魚)

ジェットフォイルとっぴー(飛魚)

資料

 2003年11月最初の連休を利用して屋久島に旅行した。鹿児島港からは、ジェットフォイルに乗り、屋久島の安房(あんぼう)港まで2時間半ほどの船旅だった。

 ジェットフォイルは、ジェットエンジンにより吸入した海水を後方に噴出して走る高速船で、航海速力43ノット(時速約80km)を誇る。

 水中翼により1.5m程浮上しながら走行するため、動揺も少なく、快適である。

 安房(あんぼう)は鹿児島県熊毛郡(くまげぐん)屋久町(やくちょう)の中心的な漁港で、屋久島の登山口になっている。

屋久島やくしま

 昭和39年(1964)霧島屋久国立公園に指定された屋久島は、太古の姿が今に残る自然の楽園で、人と猿と鹿が同数住んでいるといわれる神秘の島である。宮崎駿(みやざきはやお)監督のアニメ映画「もののけ姫」の背景は、屋久島の原始林をもとに描かれたという。
 屋久島は、鹿児島県南部の大隅(おおすみ)諸島の中にあり、大隅半島の南端から南へ約60km、種子島(たねがしま)の南西約20kmに位置し、面積503km2、周囲約105kmの五角形の島である。

大隅半島南端

大隅半島南端
 北の上屋久町(かみやくちょう)と南の屋久町に分かれ、人口は約1万4千人。古第三紀層と花崗岩層からなる高峻な島で、九州一高い宮之浦岳(1935m)を擁する。 上屋久町 屋久町 
 山の麓は亜熱帯でも冬には山頂に雪が積もるため、日本の北から南までの植生を見ることができるという。 
 安房川(あんぼうがわ)は延長20kmで高低差約2000mを下る世界で最も急な川だといわれている。
 屋久島は10年前に世界自然遺産に選ばれ、それ以来年々観光客が増えており、屋久町の統計資料によれば、平成13年(2001)には17万1千人余りの観光客が訪れている。 屋久島観光協会

屋久島

屋久島
資料
 屋久島の主な登山ルートは以下のとおりである。
1 荒川登山口−縄文杉往復(日帰り)
2 淀川登山口−宮之浦岳往復(日帰り) 
3 淀川登山口−宮之浦岳−縄文杉−荒川登山口
  (山中1泊)
4 白谷雲水峡−縄文杉往復(山中1泊) 
 今回は最も人気のある荒川登山口から 7 千年の命が宿るといわれる縄文杉までの往復日帰りコースに挑戦した。

安房川

安房川

資料


 11月1日早朝、5 時15分に宿を出て、レンタルバイクで荒川登山口まで走った。途中でヤクザル(屋久猿)が道を歩いているのに出会った。
 6 時過ぎに荒川登山口着。掲示板に 7 時までに出発するように、また、午後 5 時までには登山口に戻るようにとの注意書きがあった。
 ここから大株歩道といわれる道をたどり縄文杉まで登る。往復21km、標高差600m、ガイドブックによれば往復10時間の中級コースとされている。
 まず、登山口から30年ほど前まで木材の切り出しに使われた森林鉄道の軌道敷きを歩く。
屋久島のマップ

森林鉄道の道

森林鉄道の道

三代杉さんだいすぎ

 最初に出会う大きな杉が三代杉である。1500年ほど前に枯れた杉に二代目が生え、500年ほど前に切り倒された後、その株に三代目が生えて、ていていと聳えている。根回り10m、胸高直径2.8m、樹高24m。
              一代目 樹齢 3500年(1500年前に倒れる)
              二代目 樹齢 1000年(500年前に倒れる)
              三代目 樹齢  500年(今日に至る)

三代杉

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切り株からの芽生え

 密林ではなかなか実生(みしょう)*の木は育たないが、大木が倒れると日光の届く空間ができるので、倒れた木や切り株に落ちた種が芽をふく。倒木更新とか切り株更新といわれるもので、そうすることによって生命が循環する。 *実生(みしょう):種子から発芽して育つこと

切り株からの芽生え

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翁 杉おきなすぎ

 トロッコ道を 2 時間余り歩いた後、険しい岩だらけの山道に入る。しばらく行くと翁杉に出会う。樹皮の上に様々な植物を生やしている。胸高直径2.8m、樹高27m、樹齢2000年という

翁杉

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ウィルソン株

 さらに進むとウィルソン株がある。根回り32m、切り口の周囲13.8mの大きな切り株である。切り残された根株の中は空洞になっていて、洞の入口に鳥居がある。洞の中は10畳ほどの広さがあり、小さな社が置かれ、清水が昏々と湧き出ている。
 樹齢4000年と推定されるこの杉の木は、天正14年(1586)、楠川の牧五郎七らが櫓を組み、斧で倒したと伝えられる。残された株は、大正3年(1914)、アメリカの植物学者ウィルソンによって世界に紹介されて有名になり、ウィルソン株と呼ばれるようになった。 

ウィルソン株

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 屋久島には大杉の切り株が沢山ある。江戸時代より前は神の宿るものとして大事に守られていたようだが、江戸時代になると、薩摩藩が屋久島の島民の年貢として、米の代わりに杉の平板を納めさせたという。

 杉の平板は、幅10cm、長さ30cm、厚さ1cmほどの短冊状のもので、神社などの屋根を葺くために使われた。この板2,300枚が米1俵に相当するものとされた。その結果、江戸時代に屋久島の杉の半数以上が伐採され、多くの切り株が残ったが、その後切り株更新や植栽により、密林が回復している。
 ウィルソン株は、2.3mの高さがある。これは、木目が平行な部分が用材として用いられるので、木目が末広がりの根本は利用価値が低く、切り残されたという。

大株の中から

大株の中から

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 さらに歩くうちに目の前を鹿が通った。小ぶりのヤクシカ(屋久鹿)である。こちらを見ても落ち着いたものである。人が害を加えないからなのだろう、用心しているそぶりもない。

ヤクシカ

ヤクザル

ヤクシカ ヤクザル

資料

資料

 さらに進むと枝がざわめいていて、見ると猿が数匹いた。ニホンザルとよく似てるが、ちょっと小ぶりのヤクザル(屋久猿)である。また歩くうちに地上で遊ぶ猿を見かけた。

ヤクスギ(屋久杉)

 屋久島の自然林は、樹齢100〜300年のコスギが主で、常緑広葉樹と混交している。この中に樹齢1000年以上のヤクスギが点在している。老齢のヤクスギは現在なお 1 万本は存在すると推定されており、樹高20m、直径1〜2mに達するものが 9 割を超す。樹齢300年以下のものはヤクスギとはいわず、コスギと呼ばれる。
 薩摩藩による重い年貢を課された島民の窮乏を救うために、約300年前から老齢のヤクスギからなる原生林の伐採を始め、現在のコスギを主とした天然林はその跡地に更新したものである。

 「ひと月に35日雨が降る」といわれるほど豊富な降雨量がヤクスギやシイ、タブノキなどの自然林を育んだ。ヤクシカやヤクザルなど野生の動植物も多い。このため、大正13年(1924)に屋久島スギ原始林が特別天然記念物に指定され、また、平成 5 年(1993年)には屋久島の約20%の区域が白神山地とともに世界自然遺産に登録された。
 屋久島の自然林は、(財)森林文化協会などによる「未来に残したい日本の自然100選」にも選ばれている。現在、原生自然環境保全地域、国立公園特別保護地区、学術参考保護林等1万ha弱が禁伐によって保護されている。

したたる

したたる

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