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阿波十郎兵衛(あわのじゅうろべえ)屋敷は、吉野川の河口に位置する徳島市川内町(かわうちちょう)宮島にある。十郎兵衛は、阿波の国・宮島浦の庄屋で、浄瑠璃(じょうるり)作家近松半二(ちかまつはんじ)ら5名による傑作「傾城(けいせい)阿波の鳴門」のモデルとなった人物で、板東十郎兵衛という。
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阿波の国・宮島浦の庄屋に生をうけ、父の隠居後「十郎兵衛」を襲名。のちに苗字帯刀を許され、藩主より「他国米積入れ川口裁判改め役」を申しつけられた。当時の阿波の国は藍と製塩産業を奨励していたために、米不足になっており、他の国より米の買い付けをしなければならなかった。
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江戸幕府は、兵器や食糧を集めることを禁止していたため、食糧の輸入は密輸入となる。不運にも輸入米をめぐり部下が不正を働き、幕府の隠密もやがて藩の米の密輸入をかぎつけるに至った。
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密輸入を幕府に知られた阿波藩は、罪を全て十郎兵衛に押しつけたため、十郎兵衛は元禄11年(1696)11月21日長男以下息子3人と共に処刑され、その後妻「お弓」、娘「お鶴」は相次いで病死した。
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阿波十郎兵衛屋敷
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この屋敷は、約300年前の享保年間の建物で、十郎兵衛屋敷民芸部による阿波人形浄瑠璃の上演が行われているほか、阿波木偶人形(あわでくにんぎょう)や十郎兵衛の遺品などが展示されている。
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阿波は「人形浄瑠璃の国」といわれる。それは江戸時代に徳島藩領だった淡路島の人形座の人々が全国を巡業して回ったことや、人形首(かしら)を阿波の細工師が作ったことなどによる。 |
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人形浄瑠璃は江戸時代初期の十七世紀初めに、語りである浄瑠璃と人形、三味線が結び付いて生まれた芸能である。阿波の人形浄瑠璃芝居は、藩政時代に60近い人形座があり、大衆娯楽として神社の境内など屋外に舞台が設けられ、盛んに上演されていたという。 |
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人形浄瑠璃の舞台
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この舞台で、約25分間、「傾城阿波の鳴門」が演じられる。
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「傾城阿波の鳴門」は、板東十郎兵衛が処刑された約70年後、近松半二らにより作られた阿波藩のお家騒動の物語である。 |
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殿の名刀「国次(くにつぐ)」が盗まれ、この探索を命じられた十郎兵衛は、妻お弓と共に盗賊の仲間入りをし、役人に追われながら刀を探す。身を寄せていた祖父母が死んだため、徳島から父母恋しい娘のおつるが西国順礼をしながら大坂の隠れ家へ訪ねてくるが、親子を名乗ると盗賊の罪が娘にかかることを恐れ、我が子と知りながら泣く泣く帰らせる母と娘の情愛の場面が観客の涙を誘う。 |
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巡礼姿のおつる
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文を読むお弓
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母と子の悲しい対面
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「父(とと)さんの名は阿波の十郎兵衛(じゅうろべえ)、母(かか)さんの名はお弓(ゆみ)と申します」 舞台によくひびく声に合わせて演じられる母と子の悲しい対面と別れ。何度見ても涙を誘う名場面である。 |
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失策によって藩を追われた徳島藩の家臣・十郎兵衛は、家老・桜井主膳の命を受け、盗まれた藩の名刀「国次」を取り戻すため盗賊に身をやつす。 |
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大坂に出た十郎兵衛は、商人の藤屋伊左衛門がひいきにしていた遊女・夕霧が、桜井主膳と対立する徳島藩の悪臣・小野田郡兵衛に身請けされることを知る。そこで伊左衛門のために、悪党から奪った金で夕霧を身請けしてやる。 |
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場面は変わって、十郎兵衛と妻・お弓が潜む大坂の隠れ家。そこへ巡礼姿のおつるが両親を探しにやって来るが、親子を名乗ると盗賊の罪が娘にかかることを恐れ、心を鬼にして追い返してしまう。 |
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一方、おつると道中で出会った十郎兵衛は、娘が小判を持っていると聞き、その金を借りようとする。大声を上げて逃げようとする娘の口に手を当て、誤って窒息死させてしまう。そこへお弓が戻ってきて、事情を知り、夫婦は悲嘆の涙にくれる。その時、おつるの懐から出てきた手紙から、名刀「国次」を奪ったのは小野田郡兵衛と判明。事件は解決し、十郎兵衛の帰参がかなう。 |
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この物語の本当の悲劇は、実の父が我が娘とも知らずに誤って殺すところにあるが、母娘の出会いと別れが、名場面として繰り返し上演され、多くの人々の涙を誘ってきた。 |
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黒子役はお母さんたち
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