今回二泊したホテルは、箱根関所の西側にある箱根ホテルで、富士屋ホテルの傘下にあり、一流といって良いホテルだが、手軽に利用できるのが良い。料理も元箱根で乗ったタクシーの運転手が誉めたほどで定評があり、ヨーロッパ風のホテルであるが露天風呂の温泉もある。

　４階建てなので部屋数も少なく、十分なサービスが得られる。全室、芦ノ湖が眺められる Lake View であるのが嬉しい。初日の夜は雨が降ったが、翌朝は見事に晴れ、富士の霊峰が正面に白い山頂を見せた。

　日が昇るにつれて次第に湖が明るくなり、薄闇（うすやみ）の湖面がホテルの方に向かって光に満たされてゆく。朝の光が箱根ホテルの桟橋までやってきたとき、感動の一瞬を切り取ることができた。左に見える３人の太公望も朝日に包まれた。

　気が付くと、漁船が暗いうちから出漁しており、無風の湖面にシュプールを描くさまを望遠レンズが捉えていた。今の時期、芦ノ湖ではブラックバスやマス類が釣れるという。

　この日は、箱根ホテルでゆったりと朝食をとったあと、ホテルの直ぐ西の箱根町港（はこねまちこう）から箱根海賊船に乗り、元箱根港（もとはこねこう）を経由して桃源台港（とうげんだいこう）までの40分の船旅を楽しんだ。

　箱根フリーパスを見せて海賊船に乗り、出帆を待っていると、海賊船ビクトリア号が富士山をバックにこちらに向かってきた。芦ノ湖には３隻の海賊船が就航しており、子供たちの人気を集めている。

　箱根町を出港した海賊船は、元箱根に立ち寄った。箱根町からは外輪山が邪魔をして富士の山頂しか見えなかったが、元箱根からは美しい富士山の全貌を拝むことができた。幸運にもこの日は雲一つ無い完璧な姿だったので、素直に感動した。

　船尾の外輪を回して走るフロンティア号が見えた。この船は平成８年（1996）芦ノ湖湖畔の箱根観光船桃源台船舶工場において日立造船が建造したものである。観光船の建造技術を持つ日立造船は、海賊船型旅客船４隻（パイオニア号、ビクトリア号、ロワイヤル号、バーサ号）も建造している。

　富士山は静岡・山梨両県の境にそびえる日本一の高山で、古くは不二山・不尽山とも書いた。 富士火山帯にある典型的な円錐状成層火山で、美しい裾野を引き、頂上には深さ220mほどの火口があり、火口壁上では剣ヶ峰（けんがみね）が最も高く、海抜3,776mを誇る。

　富士山は史上たびたび噴火し、宝永4年（1707）爆裂して宝永山（ほうえいざん）を南東中腹につくってから静止しているが、現在も活火山である。富山県南東部の立山（たてやま）と石川・岐阜両県にまたがる白山（はくさん）と共に日本三霊山の一つに数えられている。

　海賊船から中央火口丘群に聳える駒ケ岳（1,327m）と、その向こうに箱根山の最高峰・神山（1,438m）が見えた。

　双胴遊覧船が日本で初めて就航したのは昭和36年（1961）で、この芦ノ湖だったという。現在、双胴船は「あしのこ丸」「はこね丸」「十国丸」が就航しており、広い展望甲板と安定した乗り心地が魅力である。

　桃源台港は、箱根観光船・箱根ロープウェイ・箱根登山バス・小田急箱根高速バスのターミナルになっている。桃源台の右に見えるのは湖尻ボート組合が運営する手漕ぎボート乗り場。更に右には箱根湖尻（こじり）ターミナルがあり、伊豆箱根船舶が箱根園・元箱根・箱根を結んでいる。このあたりの紅葉はちょうど見頃になっていた。

　11月24日（木）午後1時過ぎ、芦ノ湖上空を飛行中のJAL機から芦ノ湖の北半分を撮影することができた。芦ノ湖西側の箱根山の外輪山がハッキリと見える。桃源台から北部にゴルフ場が沢山できていることがよく分かる。そして、自然破壊になっていることも・・・。