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平成21年(2009)4月21日(火)から30日(木)までの10日間、家内と共にクラブツーリズムが主催する「憧れのギリシャ エーゲ海紀行10日間」の旅に参加した。晴れ男と自称する筆者は、今回も天候に恵まれ、TD(添乗員)の渡邊正市(わたなべ・しょういち)さんを含む27人の旅友は、ヨーロッパ最古のギリシャ文明の足跡と美しいエーゲ海の島々を巡る旅を満喫した。 |
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【凡例】 ▲:上の画像の説明文 ▼:下の画像の説明文 〈画像の左クリック〉:別窓に拡大写真を表示 |
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初日はブリティッシュ・エアウェイズのBA006便で午前11時ころ成田を出発し、12時間後にロンドン・ヒースロー空港に到着。6時間の待ち時間はきつかったが、BA機に乗り継ぎ、3時間半のフライトで午前2時半ころアテネに着いた。アテネの時差はJST-6時間。日本からアテネまで直行便がないので、かなり遠い国との印象を受けた。 |
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▼ 2日目から4日目までの3日間は、ギリシャ本土のアテネ・デルフィ・メテオラの遺跡を巡った。後半5日目から8日目までの4日間は、エーゲ海のクレタ島とサントリーニ島を訪れた。9日目は午前8時過ぎアテネを出発し、最終日の午前9時過ぎに無事成田に到着。メキシコで発生した新型インフルエンザの防疫のため、家族単位で問診票を提出し、一人ずつ検疫官の面接を受けた後で帰国することができた。 |
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▼ アテネでは最初に国立考古学博物館に行った。19世紀のネオ・クラシック(新古典)様式で建てられた博物館には、ギリシャ各地の遺跡から出土した遺品が多数収蔵されている。世界でもこれほど充実した考古学博物館は少ないといわれるだけあって、とても見応えがあった。 |
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▼ ペロポネソス半島のアルゴス地方ミケーネ宮殿内部で発見された円形墳墓A・第X竪穴墓には、男性3人が埋葬されており、死者の顔を覆う金製マスクが発見された。この墓は、紀元前16世紀頃のミケーネ宮殿の王のために造られたと考えられている。 |
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▼▲ UNESCO世界文化遺産登録遺跡出土品の目録524の黄金のマスクは、発掘者のドイツ人考古学者シュリーマンが「アガメムノンのマスク」だと唱えたが、現代の科学的手法による考古学では、この金製マスクはシュリーマンのいう「トロイ戦争」のギリシャ連合軍総司令官アガメムノンの時代より、年代的に300年以上も古い時代の製作と判定されている。 |
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▼ 現地ガイドのガストさんが流暢な日本語で説明する巨大なアンフォラは、幾何学式文様時代に当たる紀元前8世紀ころに作られたもの。墓碑として用いられたもので、黒絵で埋葬の様子が描かれている。 |
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幾何学式文様時代の巨大なアンフォラ (二つの把手を持つ壺) 804 / 紀元前8世紀
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▲▼ アンフォラは、陶器の一種で、二つの持ち手と胴体からすぼまって長く伸びる首が特徴の容器である。最初紀元前15世紀ころのレバノンからシリアの海岸に現れて古代世界に広まり、古代ギリシャやローマにおいては、ブドウ、オリーブ・オイル、ワイン、植物油、穀物、魚などの生活必需品を運搬・保存するために用いられたという。 |
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▼ 「クーロス」は、ギリシャ語で「少年」や「息子」を意味する言葉。ギリシャ美術の歴史では特にアルカイック期(紀元前7〜5世紀)にほとんど同じ形式で作られた一連の青年裸像を指す。 |
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第8室に展示されている目録2720の「スニオン岬のクーロス」は、アテネから50kmほど離れたスニオン岬のポセイドン神殿から発掘された青年裸像で、アルカイック期に造られた典型的なクーロスとして知られる。 |
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スニオン岬のクーロス(青年)像 2720 / 第8室 アルカイック期(紀元前7〜5世紀)
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▼ クーロスは正面を向き、左足をわずかに前に出し、握りしめた両手を太股の側面につけて直立していることを特徴としている。主に墓地や聖域で出土しており、死者や神を表していたと推測されているが、それぞれが何の像であったかを明確に判断することはできないという。 |
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典型的なアルカイック・スマイルをたたえたクーロス(青年)像
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アルカイック・スマイル archaic smile
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▲▼ クーロスは、口元に微笑をたたえた表情をしていることから、そのような微笑をアルカイック・スマイルといわれるようになった。パリ・ルーヴル美術館の「モナ・リザ」や奈良・中宮寺の「弥勒観音菩薩半跏思惟像」に見られる神秘的な微笑がアルカイック・スマイルといわれるのは、古代ギリシャのアルカイック期の彫刻の表情に見られる微笑に似ているからである。 |
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せいねんの らぞうめぐるや はるのあさ |
Spring morning, looking around the nude sculptures of young men. |
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↓アナビソスの青年 |
黒絵式アンフォラ↓ |
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モナ・リザ Mona Lisa |
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▼左 「モナ・リザ」は、イタリアのレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた油絵。深緑の衣装を着た一人の女性が僅かに微笑んだ半身の肖像画で、アルカイック・スマイルといわれるモナ・リザの神秘的な微笑みで名高い。パリのルーヴル美術館に展示されているが、これほど賞賛され、模写されてきた絵は、他に例を見ないといわれる。 |
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▼右 聖徳太子ゆかりの奈良市・中宮寺の本尊「弥勒菩薩半跏思惟像」(国宝)は飛鳥時代の作で、右手の人指し指と薬指を頬にあてて物思いにふける姿で知られる。材質はクスノキで、寄木技法による作例としては最古の仏像といわれ、長い年月を経て黒いつやの銅像のように見える。国宝指定の際の官報告示は、「木造菩薩半跏像」となっている。 |
京都市太秦(うずまさ)の広隆寺の弥勒菩薩半跏思惟像(国宝)とともに慈悲深いアルカイック・スマイルに特徴があり、和辻哲郎著「古寺巡礼」(岩波文庫)では「中宮寺観音」として絶賛され、今なお高い人気を博している。 |
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アナビソスの青年 |
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▼ 同じアルカイック期に造られた「アナビソスの青年」は、アテネから50kmほど離れたスーニオンのアナビソスで発見された青年裸像で、完全な姿を止めたクーロスとして知られる。 |
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褌が外れた古代オリンピック |
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▼ 男性の全裸像ばかり並んでいるが、古代オリンピックも全裸で行われていた。何故かと思って調べてみると、昔はギリシャ人の男性は褌していたことが分かった。古代オリンピックも褌一丁で行われていたが、あるとき、それが外れてしまった。それで転んで死んだか、あるいは外れた人が優勝したか、その理由はわからないが、その事故の後に全員、全裸で競技するようになったという。 |
「人間は全能の神ゼウスが自らに似せて造ったものであり、鍛えられた肉体は誇るべきものである」という考えがあって、恥ずかしくなかったという。残っている彫像も殆どが全裸というわけ。 |
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▼ 第15室にある有名なポセイドンのブロンズ像は、1928年にエヴィア島アルテミシオン岬で漁師が海から引き上げたもので、紀元前460年頃のものと推定されており、古典期(紀元前5〜4世紀)に造られた典型的な作品だという。今まさに三叉鉾を投げんとする瞬間を捉えたもので、重心をやや前に移したポーズがリアルで、均整のとれた筋肉質の身体や威厳のある顔など、躍動感溢れる傑作である。 |
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三叉鉾を投げるポセイドンのブロンズ像 15161(アルテミシオン)/古典期の部屋(紀元前5〜4世紀)
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▼▲ ポセイドンはギリシャ神話の海洋を司る神で、その宮殿は大洋の中にあり、珊瑚と宝石で飾られているといわれる。海の神といえばネプチューン Neptune だが、こちらはローマ神話に登場する海神・ネプトゥヌスの英語読みでギリシャ神話のポセイドンに相当するという。 |
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▼ 第21室には、有名な「馬に乗る少年」のブロンズ像がある。疾走する馬の躍動感と馬上の少年の姿は見事である。この像は、第15室のポセイドンのブロンズ像が発見されたのと同じアルテミシオンの沖で発見されたもので、紀元前2世紀ころの作品といわれる。 |
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名高い「馬に乗る少年」ブロンズ像 15177(アルテミシオン)
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とびかける ばじょうのおのこ はるのゆめ |
A spring dream, A boy flying on a horse. |
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▼ 第28室は紀元前4世紀の墓碑の部屋で、名作の誉れの高い「アンティキセラの青年」像がある。1900年にアンティキセラの海で発見されたこのブロンズ像は古典期(紀元前5〜4世紀)の作品で、体つきや体型のバランス、髪型などの特徴から、ローマ期(紀元前2〜紀元4世紀)のものではないという。 |
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野球のボールを握っているように見える右手に何を持っていたかで誰の像かが分かるそうだが、持ち物が分からないため像の主も分からないという。 |
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「アンティキセラの青年」像 13396(紀元前340年頃)
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▼ 「マラソンの少年」と名付けられたこのブロンズ像も極めて完成度の高い名作で、古典期(紀元前5〜4世紀)に当たる紀元前330年ころの作品と推定されている。 |
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極めて完成度の高い「マラソンの少年」ブロンズ像 / 紀元前330年
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▼ 第29〜30室はヘレニズム期(紀元前3〜紀元2世紀)の部屋で、第30室に「ゼウスの大理石像」(目録235)が立っている。紀元前130年ころの作品といわれているこの名作は、「ミロのヴィーナス(アフロディーテ)」で有名なミロス島で発見されたもので、ヘレニズム期の代表作といわれている。 |
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ゼウスの大理石像 235(紀元前130年頃) ミロス島 / ヘレニズム期彫刻の部屋
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▼ ミロのヴィーナスは、紀元前130年頃、古代ギリシャで制作された高さ203cmの大理石彫刻の女性像である。現在はパリのルーヴル美術館で展示・管理されている。この像は、ギリシャ神話におけるアフロディーテの像といわれ、「ミロ」は発見地ミロス島のラテン語読みで、「ヴィーナス」はアフロディーテのラテン語名ウェヌス Venus の英語読みという。 |
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紀元前130年頃に「アンティオキアのアレクサンドロス」と呼ばれる名前以外の素性が不明の彫刻家によって作成されたと考えられている。 |
この像は1820年4月8日に小作農であったヨルゴス Yorgos によって、オスマントルコ統治下のエーゲ海のミロス島で発見された。彼は最初、官吏に見付からぬように隠していたが、トルコ人の官吏に発見されて没収された。 |
後に、フランス海軍提督ジュール・デュモン・デュルヴィルは、この像の価値を認め、フランス大使に頼みこんでトルコ政府から買い上げ、修復後、ルイ18世に献上した。ルイ18世は、これをルーヴル美術館に寄付したため、ルーヴル美術館の所蔵品となった。以後、ルーヴルを出て海外へ渡ったことはただ1度、1964年の京都での特別展のみという。1900年頃にルーヴルで一度だけ型取りされており、現在もその型を元に、レプリカや縮小モデルが作られている。 |
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ミロのヴィーナス(ギリシャ・ミロス島) / 紀元前130年頃 ルーヴル美術館(フランス・パリ)
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