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舞の演目である神楽番付(かぐらばんづけ)は、1番から33番まであり、ほぼ一定であるが、地区毎に特徴がある。また、順番が変わったり、場合によっては省略されることもある。神面も地区の特色があり、同じ高千穂夜神楽といってもかなりの地域差がある。 |
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同じ高千穂神社の氏子たちであるが、それぞれの地区で創意工夫を凝らし、切磋琢磨して伝統の芸能を磨き上げてきたことが伺われる。このたびは幸いにも三十三番を完全を演じる下川登神楽を収録することが出来た。 |
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神楽歌は唱教ともいわれる歌謡であり、セリフのない神楽に歌いながら演目の内容や由来を説明する。それ故、神楽は和製ミュージカルであるといえる。 |
千穂神楽三十三番では、舞人(奉仕者)が舞と太鼓の調子に合わせて神楽歌を歌いながら舞う。地区によって若干歌詞異同があるほか、同じ歌が違う番付けで歌われることもある。 |
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太玉串 |
でお祓いする |
猿田彦命 |
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太玉串(ふとたまぐし)を持った猿田彦命(さるたひこのみこと)が天孫降臨の天の浮橋*(あまのうきはし)に見立てた一斗桝(いっとます)に乗って、神庭を祓い清めている(写真上)。日も暮れた午後6時40分過ぎ、いよいよ夜神楽三十三番が開始された。 |
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*天の浮橋:神が高天原(たかまがはら)から地上へ降りるとき、天地の間にかかるという橋。 |
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神楽歌 |
御神屋始め:舞入れが一段落し後、奉仕者たちが神楽本番を告げる「御神屋始め」の際に歌う。 |
○雨の降る 高天の原を通りきて 清瀬ヶ原(きよせがはら)で 逢うぞうれしき
○虚空(こうそら)より みくまたばねて 吾来たよ みくまの主とは われこそ言う |
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夜神楽を楽しむ防寒衣姿の観客たち |
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猿田彦命は、日本神話でニニギ(瓊瓊杵尊(ににぎのみこと))が降臨の際、先頭に立って道案内し、のち伊勢国五十鈴(いすず)川上に鎮座したという神。天孫降臨の後、天鈿女命(あめのうずめのみこと)と婚姻の契りを結んだことから、縁結びの神として信仰する人も多い。 |
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高千穂町三田井本組に鎮座する荒立神社は、猿田彦命と天鈿女命を祀っている。この二神の婚姻を祝して皇孫(すめみま)ニニギが慌ただしく宮居を造ったことから「荒立」と名付けられたといわれる。鈿女命は猿田彦命と結婚したことにより、「猿女君(さるめのきみ)」の名をたまわり、後世、芸能や神事の祖神となった。 |
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彦舞と一連の舞で、氏神様を迎えて神を招ずるための杜(やしろ)を建立する舞。面をつけない舞を平手(ひらて)といい、舞手(まいて)は黒い烏帽子(えぼし)に素襖*(すおう)といういでたち。手に神楽鈴と日の丸扇を持つ。4人が輪になって舞う所作(しょさ)は輪舞(わまい)。 |
*素襖:直垂(ひたたれ)の一種。大紋から変化した服で、室町時代に始まる。もと庶人の常服であったが、江戸時代には平士(ひらざむらい)・陪臣(ばいしん)の礼服となる。 |
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神楽歌 |
○小夜中(さよなか)に 綾の風こそ 吹き来たれ 神風ならば しなやかに吹け
○中央六部(天地四方)に 行(おこな)へば 宝のはちすも 雨とこそふる |
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諸神勧請(しょしん・かんじょう)に先立ち、神殿を清める平手の舞で、以下三番(神颪・鎮守・杉登)を「式三番」といい、祭典には必ず舞われる重要な神楽番付(演目)である。神庭(こうにわ)の中央で舞う所作は中央の舞。 |
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神楽歌 |
○神道ひろむる 虚空(こおぞら)より 悪しきつる伏せ 神立てて それにて牛王(ごおう)は 下り給う
○天に音楽 雲にうつ 黄金の真砂(まさご)を 御座(ござ)として それにて牛王(ごおう)は 下り給う
○いにしえの 天の岩戸の 神かぐら おもしろかりし すえはめでたし
○舞おろす なかのや正面 舞おろす 今は正面 おさめます |
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神が杜に降臨し、静まり給うことを表現した平手の舞。 |
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神楽歌 |
○注連(しめ)引けば ここも高天(たかまが) 原(はら)よ立つ 集まり給へ 四方の神々
○雨の降る 高天原を 通りきて 清瀬ヶ原(きよせがはら)で 逢うぞうれしき |
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神が杉を伝わって神殿に降臨して来る神楽。途中で入鬼神(いれきじん)が入ってくる。入鬼神(荒神)の降臨を招く鎮魂の舞であるから、舞手は腰に緑と赤の御幣を差している。 |
神楽歌 |
○うれしさに われはここにて 舞ひ遊ぶ 妻戸(つまど)もあけて 御簾(みす)もおろさず
○立ちかへり 立ち戻り 後ろの都のふしぎさよ いわそそ川の 流れたへず |
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二人が平手で舞っているところに入鬼神(いれきじん)が出現し、「嬉しさに我は此処にて舞い遊ぶ妻戸も開けそ御簾(みす)も下ろさず」「立ち帰り立ち戻りつつ後の都の不思議さよいわそそ川の流れたへせず」 の神楽歌を歌いながら舞う。入鬼神は荒神(こうじん)でもあり氏神(うじがみ)でもある。 |
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外注連(そとしめ)のそばに用意された乗り柴を大勢の村人たちが胴上げのようにせりあげて神庭まで押し込む。これは、神が椎(しい)の木(乗り柴)を通じて昇神してゆくことを表している。 |
神颪、鎮守、杉登の式三番が終わる頃には、日もとっぷり暮れ、神楽宿には、夜神楽の雰囲気が漂ってくる。 |
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国作りや田作りのために土地を堅固にする舞で、大国主の国造りの舞ともいわれる。相撲するときに四股を踏む作法は、地固めの神事から生まれたものである。六番から蛍光灯が消され、白熱灯のみの厳かな雰囲気となり、蝋燭(ろうそく)の火が目立つようになった。 |
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舞の途中で、女性の帯を襷に用いる。これは、村の女性たちが一夜の祭りに奉納し、神格を得ている奉仕者の襷にかけて舞ってもらい、子宝や安産を願うものであるという。 |
女帯を襷掛けにして舞うのは、主に荒舞*(あらまい)風の番付けに用いられ、祓(はらい)の性格を帯びる舞が多く、神々の身につけもらうことによって厄が除かれると信じられている。 |
右の手には鈴を、左手には太刀を捧げ、四方(東西南北)を踏み、中央に戻り、五方を整えて整然とおよそ50分間、舞い続ける。奉仕者(舞手)は神楽歌を歌いつつ、舞いと一体となり、忘我の境地に入るといわれている。 |
*荒舞:荒々しく動きの激しい武装した戦いの舞 |
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A village kagura,
Kimono sleeves
tied back with lady's obi. |
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おんなおび たすきにかけて さとかぐら |
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中央に置かれた日の丸扇は、イザナギ、イザナミ二神の国産みに出てくるオノコロ島、もしくは高天原からこの国にもたらされた穀種であると解釈されている。 |
神楽歌 |
○八雲たつ 出雲八重垣 妻籠(つまご)めに 八重つくるその 八重垣を
○榊とは いつの時日に 植え初めて 天の岩戸の 口と定めし
○青白の 和幣(にぎて)を枝に 折りかけて 舞うてぞ開く 天の岩戸
○吹けば行く 吹かねば行かぬ 業雲(むらくも)の 風にまかせて 身こそ安けれ
○日向なる 二上嶽(ふたがみだけ)の 麓(ふもと)には 乳が岩やに 子を種まします
○うれしさに われはここにて 舞ひ遊ぶ 妻戸(つまど)もあけて 御簾(みす)もおろさず
○舞おろす なかのや正面 舞おろす 今は正面 おさめます |
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ここで用いられた剣は水徳としての神道の剣であり、祓(はらい)と生産とを目的とする「生太刀(いくたち)」である。舞終わると「宝渡儀(たからわたしのぎ)」といって、神前で神楽宿の家主や元締めに宝剣として渡される。 |
神楽歌 |
○この御宝は 誰にゆずらん 三笠山 宝をそろえて 氏にゆずらん
○宝とる 君が袂は 八重重ね 八重の折目に 黄金咲く
○のどかなれ なおのどかな 池の水 さらさらと 氏にゆずらん |
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