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平成30年(2018)9月9日(日)から16日(日)までの8日間、静岡県磐田市(いわたし)に鎮座する矢奈比賣天神社(やなひめてんじんしゃ)において、700年余の伝統を有する見付天神裸祭(みつけてんじんはだかまつり)が開催された。
事前に
見付天神裸祭のご案内
により「見付天神裸祭全国連和田グループ第十期」を募集し、9月12日(水)の浜垢離(はまごり)に
7人(茨城1・東京3・愛知3)、9月15日(土)16日(日)の御大祭(ごたいさい)に
2人(茨城1、東京1)が参加したが、今年は、筆者の都合により、浜垢離のみを参加取材した。
使用機種:OLYMPUS OM-D E-M1 MarkII + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO |
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【凡例】
▲:上の画像の説明文 ▼:下の画像の説明文 ●:筆者の私見 〈画像の左クリック〉:別窓に拡大写真を表示 |
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画像:Google Earth |
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▲▼ 164km2の市域に17万人が暮らす磐田市は、静岡県西部・天竜川の東側に隣接し、律令時代以降、遠江国(とおとおみのくに)の国府・国分寺が置かれた古代の政治文化の中心都市であり、戦国時代から江戸時代にかけては、東海道五十三次の宿場町である見附宿(みつけじゅく)として栄えた。 |
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昭和15年(1940)、磐田郡見付町(みつけちょう)・中泉町(なかいずみちょう)・西貝村(にしがいむら)・天竜村(てんりゅうむら)が合併して磐田郡磐田町が発足。昭和23年(1948)に市制が施行され、平成17年(2005)には磐田市と磐田郡竜洋町(りゅうようちょう)、福田町(ふくでちょう)、豊田町(とよだちょう)、豊岡村(とよおかむら)が合併して現在の磐田市となった。 |
東海道本線敷設に際して当時繁栄していた見付町の住民が家畜に影響が出ると考えて反対したため、その南の中泉町に中泉駅が設置され、磐田町に合併後は磐田駅となって発展した。現在、磐田市はオートバイメーカーのヤマハ発動機や自動車メーカーのスズキの企業城下町で、2016年、五郎丸でブレイクしたラグビーのトップリーグ・ヤマハ発動機ジュビロとサッカーのJリーグ・ジュビロ磐田の本拠地として知られる。 |
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画像:Google Earth |
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▲▼ 見附宿(みつけじゅく) は、旧東海道の宿場で、東海道五拾三次の江戸から数えて28番目、京から数えて26番目にあたり、現在の静岡県磐田市の中心部に位置する。「見附」の名は、京から江戸に下る途中、旅人が初めて富士山を見付けることができる場所であったことから付けられたといわれる。 |
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東海道五拾三次之内 見附 / 歌川廣重 画
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▲ 10世紀に遠江国の国府が置かれ、鎌倉期には国衙*(こくが)と守護所**(しゅごしょ)が置かれたことから、中世の東海道屈指の規模を持つ宿場町となった。 |
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天竜川の左(東)岸にあたるが、大井川と違って水深があったため、主に舟が使われており、大井川ほどの難所ではなかった。しかし、川止めのときは、島田宿などと同様に、足止めされた人々で賑わった。また、遠江国分寺や見附天神の門前町であり、姫街道***(ひめかいどう)の分岐点でもあった。 |
*国衙(こくが):日本の律令制において国司が地方政治を遂行した役所が置かれていた区域
**守護所(しゅごしょ):中世日本において守護が居住した館の所在地
***姫街道(ひめかいどう):主要街道の別ルート(人通りが少なく、犯罪に巻き込まれる可能性が少ない街道) |
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画像:Google Earth |
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▲▼
磐田市の中心部に位置する見付宿場通り(みつけしゅくばどおり)(旧東海道)一帯は、江戸時代に東海道五拾三次の見付宿(みつけじゅく)として栄えた宿場町である。国指定重要無形民俗文化財の見付天神裸祭は、8日間にわたって行われる矢奈比賣(やなひめ)神社(見付天神)の秋の例大祭で、その最大の見所が毎年旧暦8月10日の直前の土日に催行される御大祭(ごたいさい)と、その3日前に行われる浜垢離(はまごり)で、今年は、浜垢離が
9月12日(水)、御大祭が9月15日(土)16日(日)に開催された。 |
矢奈比賣神社(見付天神)公式サイト 見付天神裸祭保存会公式サイト |
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画像:Google Earth |
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見付天神裸祭は、矢奈比賣(やなひめ)神社(見付天神社)の女神・矢奈比賣が遠江国の総社である淡海国玉神社(おうみくにたまじんじゃ)の男神・大国主命(おおくにぬしのみこと)のもとへ一夜の逢瀬を楽しむために神輿渡御する祭である。渡御に先立ち、褌(ふんどし)腰蓑(こしみの)姿の裸衆が道中練りと称して町中を練り歩き、拝殿で鬼踊りと称して乱舞することから裸祭と呼ばれる。 |
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女神が渡御する姿を見られたくないとの思いからか、神輿渡御の際は、沿道の全ての照明が落とされ、暗闇の中で密かに渡御が行われる。現在でもこれらの神事が厳しく護られていることが国の重要無形民俗文化財に指定された大きな要因となっている。 |
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見付天神と愛称される |
矢奈比賣天神社 |
/静岡県磐田市 |
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平成30年(2018)見付天神裸祭ガイドブック表紙 |
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資料:見付天神裸祭保存会 |
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▼ 筆者の手元には「はだかまつり」という表題の見付天神裸祭ガイドブックがある。初出の平成19年版以来、平成30年版まで12巻を数える。見付天神裸祭ガイドブック編集委員会によるものだが、実質的には浜松市のデザイン会社に依頼しており、とても洗練された内容で、さすがプロの仕事だと思う。(ガイドブックには、筆者の写真が数多く使われている。) |
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平成30年(2018)見付天神裸祭日程表
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資料:見付天神裸祭保存会 |
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前日に愛知県グループ3名と共にJR磐田駅前のビジネスホテルに宿泊し、1泊2日の日程で平成30年(2018)9月12日(水)静岡県磐田市で行われた見付天神裸祭の浜垢離(はまごり)を密着取材した。
駅前のビジネスホテルからタクシーで見付天神裸祭保存会の福代陽一(ふくよ・よういち)さん宅(カットサロン小西)に行き、今年の輿番・東区権現(ごんげん)のバスに便乗させて頂き、遠州灘(えんしゅうなだ)福田海岸(ふくでかいがん)に向かった。 |
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挨拶する権現町「権現」総代 2018.09.12 09:33
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神輿渡御の際に神輿を担ぐ輿番という大役は、東区・権現町(ごんげんちょう)権現と東中区地脇町(じわきちょう)地脇の二つの祭組が交互に分担しており、今年は権現が輿番である。烏帽子(えぼし)・白丁(はくちょう)・腹巻・褌(ふんどし)・白足袋(しろたび)・草鞋(わらじ)という装束が義務づけられている。 |
天神様の神輿は、輿番しか担ぐことができないので、輿番は裸祭の主役であり、栄誉職である。御大祭当日、暗闇の中を渡御する際には裸っぽたちが神輿に触れないよう東区・富士見町元門車(げんもんしゃ)が〆切りとして神輿の後部をガードする。輿番はそれほどの特権を持つ役職なのである。 |
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貸し切りバス3号車で福田海岸に向かう輿番
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ダイドードリンコ日本の祭り撮影班の取材を受ける輿長
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浜垢離会場の遠州灘・福田海岸
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松原の神事が行われる斎場に向かう輿番たち 10:02
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▼ 午前10時15分頃から遠州灘に面する磐田市福田(ふくで)海岸の松原に注連縄を張り巡らした斎場(さいじょう)で「松原の神事」と呼ばれる「松原放生会祭(まつばら・ほうじょうえ・さい)」が始まった。 |
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松原の斎場に鎮座する久野隆宮司以下四人の神職たち 10:15
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▼ 見付天神に向けた祭壇を囲み、氏子28ヵ町の神社総代(見付天神三社崇敬者会)〈手前〉と烏帽子(えぼし)・白丁(はくちょう)姿の先供(さきとも)と呼ばれる神輿先供係(みこしさきともがかり)〈奧〉や宮神輿を担ぐ輿番(こしばん)〈右〉たちがコの字型に陣取った。 |
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神事の段取りを説明する神輿先供係の長老
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久野宮司による祝詞奏上 10:19
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祭壇は、神が降臨する神籬(ひもろぎ)となる松の木の根元に鉾を立て、先供と輿番の浜印(はまじるし)(幟)が束ねられ、その手前に小唐櫃(こからびつ)を据え、その上に八足机(はっそくづくえ)が二台置かれたものである。 |
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▲▼ この神事は、神宝(しんぽう)(神社の宝物や調度品)を祓い清めることと、命之魚(みょうのうお)を放つことにより殺生(せっしょう)の罪を祓い清める放生(ほうじょう)が目的である。神職二名により献饌(けんせん)と命之魚の献上が行われた後、
久野隆(くのたかし)宮司(52歳)による祝詞(のりと)奏上・玉串奉奠(たまぐしほうてん)に続き、氏子総代と見附天神裸祭保存会長による玉串奉奠が行われた。 |
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氏子長老による玉串奉奠 10:23
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見付天神三社氏子崇敬者会・鈴木邦孔会長(奥)と見付天神裸祭保存会・鈴木亨司会長(手前)
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命之魚を放流する小川に向かう神輿先供係 10:30
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▲▼ 松原で放生(ほうじょう)される命之魚(みょうのうお)は、何時の頃からか大原の大杉家の当主が捕獲して献上するのが習わしとなっている。大杉家では「かけ魚(うお)」と称し、必ず奇数匹の鯔(いな)(鯔ぼらの子)を献上するという。しかし、実際は、篦鮒(へらぶな)であることが多く、松原近くの小川に放流される。 |
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へらぶなを おがわにかえす あきのはま |
Autumnal beach, releasing a crucian carp
to the small stream. |
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命之魚を小川に放流する 10:31
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