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田沢湖の最大深度は423.4mあり、第2位の支笏湖の363m、第3位の十和田湖の327mと続く。世界では17番目に深い湖である。ちなみに世界で最も深い湖はロシアのバイカル湖の1,637m。大きく深い湖であるが、その成因は不明だという。 |
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この深さゆえに、真冬でも湖面が凍り付くことはなく、また、湖水に差し込んだ太陽光により、水深に応じて明るい翡翠(ひすい)色から濃い藍(あい)色に変化し、カナダの氷河湖のような美しい色彩を放っている。 |
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かつては、火山性ミネラル分の高い水質と流入河川の少なさのため、昭和6年(1931)の調査では摩周湖に迫る31mの透明度を誇っていたが、昭和15年(1940)に発電所の建設と農業振興のために、玉川温泉からpH1.1に達する強酸性の水(玉川毒水)を導入した結果、田沢湖は急速に酸性化し、固有種のクニマスは絶滅、魚類はほぼ死滅してしまった。 |
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そのため、昭和47年(1972)から石灰石を使った酸性水の中和対策が始まり、1991年には抜本的な解決を目指して玉川酸性水中和処理施設が稼働を開始。湖水表層部は徐々に中性に近づいてきており、放流されたウグイが見られるまでになったが、湖全体の回復には至っていないという。行政の愚策が未だに尾を引いていようとは、この美しい景観からは想像できない。 |
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田沢湖の岸辺から突き出たように鎮座する漢槎宮は浮木神社(うききじんじゃ)ともいい、田沢湖畔の潟尻(かたじり)に立つ白木造りの社殿である。流れついた浮木(大木が湖面から2mほど顔を出し、斜めに水底に深く消えている流木)を祀ったものといわれる。 |
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田沢湖に鎮座する |
漢槎宮 |
(浮木神社 ) |
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神社の向こうに黄金の辰子像が見える。 |
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田沢湖のほとり神成村に辰子という名の娘が暮らしていた。辰子は類い希な美しい娘であったが、その美貌に自ら気付いた日を境に、いつの日か衰えていくであろうその若さと美しさを何とか保ちたいと願うようになる。辰子はその願いを胸に、村の背後の大蔵観音に、百夜の願掛けをした。必死の願いに観音が応え、辰子に山深い泉の在処を示した。辰子はお告げに従って泉の水を飲んだが、急に激しい喉の渇きを覚え、いくら水を飲んでも渇きは激しくなるばかりであった。狂奔する辰子の姿は、いつの間にか龍へと変化していった。自分の身に起こった報いを悟った辰子は、田沢湖に身を沈め、その主として暮らすようになった。 |
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なつのうみ うぐいのおどる たつこぞう |
The summer lake, Daces dancing at the bronze of Tatsuko. |
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辰子の母は、山に入ったまま帰らない辰子の身を案じていたが、やがて湖の畔で辰子と対面した。辰子は変わらぬ姿で母を迎えたが、その実体は既に人ではなかった。悲しむ母が、別れを告げる辰子を想って投げた松明(たいまつ)が水に入ると魚の姿に変わった。これが田沢湖のクニマス*の始まりという。
北方の海沿いに、八郎潟(はちろうがた)という湖がある。ここは、やはり人間から龍へと姿を変えられた八郎という龍が終(つい)の棲家(すみか)と定めた湖であった。しかし八郎は、いつしか山の田沢湖の主・辰子に惹かれ、辰子もその想いを受け容れた。それ以来八郎は辰子と共に田沢湖に暮らすようになり、主のいなくなった八郎潟は年を追うごとに浅くなり、主の増えた田沢湖は逆に冬も凍ることなく、ますます深くなったという。
*クニマス:サケ目・サケ科に分類される淡水魚の一種。別名キノシリマス、キノスリマス、ウキキノウオ。かつて秋田県の田沢湖に生息していたが、絶滅した。現存している標本は20体あまり。産卵の終わったものをホッチャレ鱒、死んで湖面に浮き上がったものを浮魚(うきよ)という。
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この伝説を知った上で辰子像を見ると、現代風の顔つきの女性がシミーズ*を纏っているように見え、日本の昔話である辰子(姫)伝説をイメージするのは難しい。また、右目が潰れているように見える。 |
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*シミーズ:イギリスの帆船カティーサークは、イギリスの詩人バーンズの「シャンターのタム」に出てくる魔女の名前で、その意味は、魔女が着ている短い女性の下着、つまりシミーズ(シュミーズの転訛)のこと。「シャンターのタム」では、乗馬途中に、魔女が馬の尻尾を掴む悪戯をする。この話から船名をとったカティーサークの船首像は、シミーズ姿で乳房をあらわにした魔女がポニー・テールを掴んでいる(写真下)。 参照:船のある風景前編(1/2) |
辰子像が金色なのは、玉川温泉の水を引き入れたために田沢湖の水質が強酸性となり、 従来のブロンズ像ではすぐに錆びるから、金箔漆塗り仕上げとなったという。漆がはげても金箔は腐食しないので、金が剥がれ落ちない限り、永遠の光沢を放つことだろう。 |
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イギリスの帆船カティ・サークと船首像/グリニッジ(イギリス)
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昼食後、春に続いて夏の角館を訪れた。秋田県仙北郡(せんぼくぐん)角館町(かくのだてまち)は、平成17年(2005)に田沢湖町、西木村と合併し、仙北市(せんぼくし)となった。「かくのだて」として名を馳せるこの地は、秋田県のほぼ中央に位置し、深い木立と重厚な武家屋敷が今もなお藩政時代の面影を残しており、「みちのくの小京都」と呼ぶにふさわしい風情を町全体に漂わせた桜の名所である。 参照:角館武家屋敷(みちのく観桜の旅) |
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りょくいんを わたりあるくや かくのだて |
Kakunodate, walking shade of the trees one after another. |
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角館は、元和6年(1620)この地方を領していた角館城主・芦名義勝(あしな・よしかつ)によって造られた町である。豊かな仙北平野の北部に位置し、玉川と桧木内川(ひのきないがわ)に沿い、三方を山々に囲まれた地形は、城下町を形成するのに最も適した場所だった。 |
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撮影:松井公代 |
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角館は、茶筒などの樺細工が有名。「樺」の字から白樺を連想するが、材料はオオヤマザクラとカスミザクラの樹皮だけなので、桜皮(おうひ)を使っていることをわかりやすく示すために、「桜皮細工」と書いて表示しているところもある。何故「カバ細工」というようになったのかは、良く分かっていない。角館では、昔は「サクラカバ」と呼んでいたが、今ではカバといえば桜の樹皮をさすようになったという。 |
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角館の地場産業として定着した樺細工は、かつては胴乱*(どうらん)や印籠が主で、参勤交代の土産物に所望されたともいわれる。近代民衆工芸運動の先駆者である柳宗悦(やなぎ・むねよし)は、「日本固有のもので、日本の木である桜が使われている」と高く評価。角館が唯一の産地である樺細工は、一時廃れそうになったものの、角館の商人と職人の手によって現在に受け継がれている。 |
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*胴乱:革や羅紗布などで作った方形の袋。薬・印・煙草・銭などを入れて腰に下げる。 |
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春になると、桧木内川の堤防に約400本のソメイヨシノが延長約2kmにわたり見事な桜並木をつくる。花のトンネルとしては名実共に日本一で、国の名勝に指定されている。シダレザクラと合わせて、さくら名所100選の一つである。 |
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秋田県秋田市にある千秋公園は、久保田藩主佐竹氏の居城であった久保田城の跡地に整備された公園で、面積は16.29ha。秋田市出身の漢学者狩野良知(かのう・りょうち)による命名で、秋田の「秋」に長久の意の「千」を冠し、長い繁栄を祈ったものと伝えられる。かつての追手門の堀は、丁度蓮の花が満開だった。 |
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62回を数える竿燈妙技会は、戦後、竿燈の技術を伝承するために開催されるようになったもので、名人を目指す者が何度となく挑む勝負の場である。大人が参加する大若の演技とお囃子、小中学生の小若の技が三日間千秋公園の中土橋(なかどばし)のそばで競われる。 |
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5人1組のチームで行われる大若の競技は、基本技を競う規定演技の部と、思い思いの技を凝らす自由演技の部がある。個人の部では、各町内随一の精鋭が参加し、名人中の名人の座を競う。 |
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半径3mのサークルの中が競技の舞台。規定、自由演技ともに技を決めたら30秒静止するのがルール。照りつける太陽に目がくらみ、気まぐれな一陣の風に倒れるのも後を絶たないというから、運不運も実力の内か。 |
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差し手は、夜竿燈よりもこの昼竿燈の競技の方に気合が入るという。「保戸野鉄砲町竿燈会」は5連覇を3回果たした名門で、未だにこれを超える竿燈会は存在しない。また、個人戦では室町竿燈会が最多5人の現役チャンピオンを輩出しているという。 参照:室町竿燈会 |
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千秋公園の竿燈妙技会が開かれる場所近くの路上に竿燈の体験会場があり、誰でも参加することができるが、取材したときには男子児童の姿が目立った。竿燈は男の世界ということなのだろう。 |
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