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■■■ 「蘇民祭セクハラ・ポスター騒動」の結末! ■■■ |
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2008年1月8日(火)の夕方、「岩手県奥州市作成の黒石寺(こくせきじ)蘇民祭(そみんさい)のポスターが女性に対するセクハラに当たるとの理由でJR東日本が駅構内に掲示することを拒否した」旨のテレビ報道から始まったこの騒動は、新聞や週刊誌などが次々に話題に取り上げて全国報道したことから、黒石寺蘇民祭は、一躍全国に知られることになった。 |
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この騒ぎで、「日本三大奇祭・黒石寺蘇民祭」http://wadaphoto.jp/maturi/kisai_2.htm と「黒石寺蘇民祭」 http://wada
photo.jp/maturi/somin1.htm が「2ちゃんねる」にリンクされたためにアクセスが集中し、3日間ほどWa☆Daフォトギャラリーが麻痺するという被害を受けた。その間の事情は徒然日記
「Wa☆Daフォトギャラリー」アクセス殺到でパンク状態!に詳しい。 |
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2008.1.9 20:50のカウント状況/日本三大奇祭(黒石寺蘇民祭) |
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2008.1.9 20:50のカウント状況/黒石寺蘇民祭 |
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その後、岩手県警が蘇民袋争奪戦で、蘇民袋に切れ目を入れる親方が全裸なのは、刑法のわいせつ罪(公然猥褻物陳列罪)に当たるとするコメントを発表し、マスコミが全国的に報道したため、千年に渡って継続され、国より「記録保存すべき無形民俗文化財」の指定を受けている「黒石寺蘇民祭」が再び注目を浴び、全裸の適否について議論が白熱した。 |
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岩手県警が刑法のわいせつ罪に当たるとした全裸の親方(蘇民袋争奪戦) |
↓親方 ↓山本さん・長谷川さん |
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拡大写真(1400x1400)265KB |
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刑法に当たる罪で裁判官が有罪を判決するためには、構成要件該当性、違法性、有責性の全てが認定されなければならず、一つでも欠けると無罪となる。今回の場合、祭りの最中に公衆の面前で全裸になる行為は、公然猥褻物陳列罪に定める構成要件に該当し、正常な人格を有する大人の故意に基づく行為であるので有責性をも具備するが、ボクシングのリング上で相手を殴って怪我をさせたような場合と同様に、正当業務行為や歴史的慣行として違法性阻却事由が存在するので、違法性がないと判断され、無罪となるのは確実だろう。(和田説) |
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警察は、蘇民祭の全裸シーンがアダルト・サイトなどに出回り、風紀が紊乱していることを憂慮し、アダルト・サイトを取り締まるよりも全裸を禁止した方が手っ取り早いと判断したのではないかと推測されるが、数年前から全裸による祭礼を止めさせようとしており、昨年(2007)、蘇民祭の最高責任者である黒石寺・藤波洋香(ふじなみ・ようこう)住職が一般参加者の全裸を禁止することを受け入れるという苦渋の決断をした。 |
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そのため、昨年は警察が初めて蘇民祭の内容に介入し、私有地である黒石寺境内で催行された柴燈木登(ひたきのぼり)で全裸で山内節(やまうちぶし)を歌った「昇ちゃん」こと長谷川昇司さんを境内に設置された警察用のテントに呼び出し、褌を着用するよう指導した。この前代未聞の事件は、伝統の祭りを忠実に伝承してきた祭り関係者や有識者に大きな衝撃を与えた。私は、千年の伝統文化の変質に心を痛めながら、昨年発表した
黒石寺蘇民祭 の最後に「昇ちゃんの蘇民祭」と題する随筆を発表した。(以下に再掲) また、国内のみならず海外の読者からも祭りを変質させないよう励ましのメールをもらった。 |
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昇ちゃんの蘇民祭 |
私が心配するのは、このおおらかな祭りが、変質してゆくということである。数年前から素裸で参加することを自粛する動きがみられ、今年、素裸で裸参りをした人は、昇ちゃんを含めて僅か二人であった。昇ちゃんは、伝統に従って三巡目で素裸になり、その後柴燈木(ひたき)に上がって素裸で山内節を披露した。 |
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昇ちゃんの熱唱!「山内節」 |
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画像をクリックすると山内節が聞けます! |
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しかし、事後、昇ちゃんは警察から褌を締めるよう注意を受けた。藤波住職が健全な蘇民祭を永続させるために苦渋の決断をしていたことを知った昇ちゃんは、ショックを隠しきれないでいたが、住職の意を酌んで、来年から素裸を止めることにした。そのため、来年の蘇民祭から素裸で参加する人はいなくなり、褌だけの裸祭りになる。 |
全裸ということで奇祭といわれ、全国的に知られるようになった黒石寺の蘇民祭は、その弊害として興味本位の参加者が増え、風紀が乱れ、全裸ビデオが流れて、アダルトサイトなどで悪用されるなど、公序良俗に反する弊害が指摘されてきた。藤波住職もこれ以上伝統文化だとして固持できないと判断されたものと思われる。 |
記録保存すべき国の無形民俗文化財であるだけに、私ばかりでなく、蘇民祭の伝統を守るために献身してきた山本グループや有識者たちは、日本の祭りのおおらかな原点が失われることの重大性に鑑みれば、どうしても割り切れない気持ちが残ることはいなめない。地元にも賛否両論がある。 |
しかし、時代の変遷による価値観の多様化や映像文化の発達などに伴い、伝統文化も時代の要請に合わせて変質してゆかざるを得ない状況にあり、黒石寺住職の決断は、現実的選択と思われる。 |
私の予測では、今後、鬼子を背負う人、袋出しをする人、袋に刀を入れる人などの「役持ち」は素裸の伝統を保持し、観衆の面前で裸参り・柴燈木登・蘇民袋争奪戦に参加する者には褌が義務づけられるものと見られる。 |
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愛知県稲沢市(いなざわし)の 國府宮はだか祭 では、最後に全裸の神男(しんおとこ)が現れるが、9千人のはだか男は全員褌を着用しており、黒石寺蘇民祭もそのような形になるものと思われる。ともあれ、一般参加者の素裸が無くなったとしても、それ以外の伝統文化は大手を振って存続させることができるわけで、蘇民祭を末代まで健全に伝えてゆけることが約束されたともいえよう。 |
そして、昇ちゃんは、蘇民祭千余年の歴史の中で、柴燈木の上で素裸で山内節を唄った最後の男として、永遠に語り継がれてゆくことになる。昇ちゃん、長い間ご苦労さま、そして、おめでとう! これからは、褌を締め直して誰に憚ることなく山内節を唄って欲しい。 ( 2007.3.14 黒石寺蘇民祭 より抜粋 ) |
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私がこの随筆に書いた 國府宮はだか祭 (こうのみや・はだかまつり)では、最後に厄を一身に背負う全裸の神男(しんおとこ)が数千人の裸男たちの前に現れ、体中を触られながら渦の中心となって参道を移動し、最後に社殿に収容・救出される。手桶隊が肌と肌の接触による火傷を負わないよう渦に水をかけ、神男もあらかじめ全身を剃毛して怪我を防いでいる。 |
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これがこの祭りのクライマックスなのだが、愛知県警は、この全裸の神事を認めており、神男のそばで事故防止のための雑踏警備に専念している。伝統の神事という違法性阻却事由がある限り、たとえ刑法のわいせつ罪に当たるとして起訴されたとしても、違法性がなく、無罪となるのは明らかだろう。愛知県警もそのように判断しているものと思われる。 |
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話を蘇民祭に戻すと、岩手県警が一般参加者のみならず、神聖な祭事を担う親方衆の全裸まで刑法のわいせつ罪に当たると発表したことを受けて、テレビ朝日が2月11日夕刻「蘇民袋を切り裂く親方が全裸なのは問題で、開催が危ぶまれている」旨報道したことから、再び私のサイトはパンク状態に陥った。 |
平成20年のセクハラ?ポスター |
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私は、警察の見解は蘇民祭を冒涜するものであり、とても許されるものではないと思っていたところ、渡海文部科学大臣が警察の行きすぎた行動に不快感を示し、警察権力の介入を批判する談話が発表された。 |
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これに対し、警察当局は、これまでのいきさつを十分踏まえたものだと弁解したが、それなら介入することはできないと判断すべきで、警察の不明を渡海大臣によって糾弾された格好となり、大臣のコメントで、伝統の裸文化を維持したいという熱い思いを抱く多くの良識派が溜飲を下げた。 |
2月13日夜から始まった今年(2008)の蘇民祭では、47社約170人もの報道関係者をはじめ、例年になく大勢の見学者が押しかけたが、一般参加者の全裸姿は見られず、柴燈木登(ひたきのぼり)では褌を締めた長谷川さんが登場し、山内節を声高らかに披露した。 |
クライマックスの蘇民袋争奪戦では、蘇民袋を切り裂く親方は、照明が消されたあと、フラッシュを浴びながら全裸で登場した。警察の出方が注目されたが、渡海文部科学大臣のコメントが効いたのか、警察の介入は一切なく、伝統の行事は全うされた。 |
この結果、来年からは警察の介入はないと推測され、藤波住職が推進する伝統の蘇民祭は不滅となった。これからも国の指定を受けたこの無形文化財を変質することなく存続されることを祈念し、微力ながら応援を続けてゆきたいと思う。 |
最後に、藤波洋香住職と、補佐役として親方から蘇民袋を切り裂いた小刀を受け取る山本啓一さん(東京都目黒区 70歳)、そして伝説の長谷川昇司さん(東京都八王子市 57歳)のコメントを紹介して、この小論を締めくくりたい。 |