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はじめに |
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平成23年(2011)7月24日(第4日曜日)、埼玉県秩父市荒川白久(あらかわ・しろく)に鎮座する猪鼻熊野神社(いのはな・くまの・じんじゃ)で、「猪鼻の甘酒こぼし」(埼玉県無形民俗文化財)が開かれたので、密着取材した。 |
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【凡例】 ▲:上の画像の説明文 ▼:下の画像の説明文 〈画像の左クリック〉:別窓に拡大写真を表示 |
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Google Map |
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▲▼ 578km2に7万人が暮らす秩父市は、埼玉県北西部の秩父地方(秩父盆地)に位置し、埼玉県内で最も広い自治体である。市域のほとんどが秩父多摩甲斐国立公園や武甲・西秩父埼玉県立自然公園に指定されている。 |
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芝桜と
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武甲山 |
(1,304m)/ 秩父市 |
羊山 |
公園 2011.5.4 |
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▲▼ 南西から北東に荒川(あらかわ)が流れ、河岸段丘を形成する。秩父市の南東部にそびえる武甲山(ぶこうさん)(1,304m)では石灰石を産出し、露天掘りが行われている。
秩父市公式サイト |
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▲
秩父市は、昭和25年(1950)に市制が施行されて以来、周辺の町村が編入されて市域が広がってきたが、平成17年(2005)には秩父郡吉田町・荒川村・大滝村と新設合併を行い、新生・秩父市となった。祭会場の猪鼻(いのはな)は、秩父郡荒川村に位置していたが、この合併により、秩父市に編入された。
秩父観光協会荒川支部 |
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事前に秩父市荒川総合支所地域振興課(Tel:0494-54-2114)に電話取材したところ、「甘酒こぼし保存会」会長の浅香文男さん(72歳)の電話番号 0494-54-0218 を教えて頂いたので、直接会長に密着取材をお願いしたところ、快く了解していただいた。 |
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また、祭の前日に甘酒の仕込みが行われるので、前日から取材したらどうかとのアドバイスを受けたので、7月23日(土)・24(日)の両日、朝5時起きし、JR青梅線(河辺〜拝島)・八高線(拝島〜東飯能)・西武秩父線(東飯能〜西武秩父)・秩父鉄道(御花畑〜三峰口)を乗り継ぎ、朝8時に猪鼻熊野神社に行き、二日間にわたって祭の一部始終を激写し、貴重な記録を残すことが出来た。 |
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▲▼
秩父鉄道の西の終点「三峰口」で下車すると、駅前には、「しだれ桜とそばの里」をキャッチフレーズにした荒川(旧荒川村)の観光案内図が設置されていた。観光スポットが多く、登山の入口でもあり、多くの観光客や登山客が訪れるという。観光案内図には、熊野神社甘酒まつり(7月第4日曜日)の表示があった。 |
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↓□甘酒まつり(甘酒こぼし)の案内 |
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▼ 列車の到着にあわせて、駅前から路線バス(西武観光バス)が出発するというので、二つ目の「荒川局前」で下車することを確かめて乗車した。(東の方にも熊野神社があるので、間違わないように。) |
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▼ バスは、行き先が違っていても必ず荒川に架かる白川橋を渡り、左折して●
のように走る。幸運にも祭の準備にやってきたという女性が同乗していたので、彼女の案内で迷わずに熊野神社の参道入口に着くことができた。 |
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猪鼻 |
熊野神社へのアクセス(バス5分・徒歩15分) |
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▲▼
「荒川局前」のバス停は、荒川郵便局の東側(手前)にあった。バス停を下りると、右手前方に「甘酒まつり」の石碑があり、参道入口はすぐに分かった。既に、準備作業にやってきた氏子の姿があった。 |
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「甘酒まつり」の石碑が立てられた熊野神社参道入口 07:53
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▼
参道入口の左側にはふるさと伝言板があり、「熊野神社夏季大祭 甘酒こぼし 日時 七月二十四日 祭典 午前十時 甘酒こぼし 午後一時」と墨書されたポスターが張り出されていた。
この祭は、毎年7月第四日曜日に開催される。 |
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熊野神社→ |
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▲▼
熊野神社の参道は、荒川水系「上の沢」放水路の奥にあり、この放水路の西側(向かって左)に荒川郵便局がある。祭には荒川郵便局長も来賓として招待される。 |
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荒川水系「上の沢」放水路↓ |
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▼
「上の沢」放水路に沿って北に進むと、木製の鳥居と急な石段があり、その奥に熊野神社が鎮座している。この位置から東(右)に向けて放水路に沿った舗道があり、氏子たちはその道をあがって神社に行った。 |
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▼ 鳥居のそばには、秩父市教育委員会による「甘酒まつり」の説明パネルが設置され、祭の起源や概要が紹介されていた。説明の中で、「カツコミ番」とあるが、これは「かき込み番」
のことで、「カキコミ」が「カッコミ」として採録され、「ッ」が「ツ」と書かれてしまったのであろう。 |
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南面する熊野神社の社殿 08:00 |
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↓社務所 |
↓拝殿(奥に幣殿・本殿) |
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▲▼
石段をあがり、丁度朝8時に熊野神社に着いた。社殿の右手前にも教育委員会が作成した甘酒祭りの由来を説明したパネルが置かれていた。この祭は、昭和35年(1960)に埼玉県無形民俗文化財に指定されている。 |
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甘酒こぼし保存会から頂いた資料によると、地元猪鼻区の小林家に伝わる古文書(こもんんじょ)があり、それが享保(きょうほう)15年(1730)に源清信という人が書いた「熊野大神縁起」である。パネルの「熊野大神縁記」の「縁記」は「縁起」の誤植と思われる。 |
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保存会の資料によると、「景行天皇(西暦71-130年)の第三皇子である倭建命(やまとたけるのみこと)が東夷(とうい)(東方のえびす、えぞ)平定のおり、甲斐の国(山梨県)から雁坂峠を越えて三峯(みつみね)に登り、下山の途中、この地で人々を苦しめていた大きな猪(いのしし)を退治した。 |
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↓猪鼻区公会堂 |
↑東 |
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南→ |
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実はこの猪は山賊の頭で、仲間たちもみんな巨岩に押し倒されて死んでしまった。この巨岩が猪の鼻にそっくりだったので、この土地を「イノハナ」と呼ぶようになった。 |
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山賊を退治してもらった人々は大変喜び、濁り酒(ドブロク)を造って命(みこと)に献上した。これが後に甘酒となり、村人がお互いに甘酒をかけあう疫病除け(えきびょうよけ)のまじないとなり、熊野神社(オクマンサマ)の「甘酒こぼし」という夏祭として今に伝わっている。 |
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←石段 |
↑西 |
↓神楽殿 |
↓神札授與所 |
↓社殿 |
↓猪鼻公会堂 |
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↓甘酒かきこみ所 |
北→ |
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現在は、毎年七月第四日曜日の午後一時、無病安全豊作などの祈願をし、土地の人が造った甘酒を熊野神社にお供えし、参詣の人々や氏子たちが飲んでから、子供から老人までが、ふんどしひとつで賑やかに甘酒を頭からかけ合う「甘酒こぼし」をしている。」(埼玉県秩父市荒川白久猪鼻 熊野神社社務所 甘酒こぼし保存会) |
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▼
午前8時半になると、熊野神社に出仕した氏子たちは、全員境内の木陰で輪になり、ミーティングが行われた。挨拶のあと、作業分担を確認しているのは、黒澤勝孝・猪鼻区長(いのはなくちょう)で、夏祭実行委員長の立場にあり、2日間にわたって祭の指揮を執る。 |
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りょくいんに つどうむらびと ほうしのひ |
The day of
volunteer labor, villagers meeting in the shade of trees. |
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挨拶し作業分担を確認する黒澤勝孝 |
猪鼻区長 |
(夏祭実行委員長) |
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