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20分ほど経った頃、もう一人の荒鬼(あらおに)(黒鬼)役の僧侶が別のホンガイシャクに背負われて入堂した。荒縄で体を網状に縛られ、黒色のオーバーオールで身を包んでいる。二人の僧侶の手助けで黒鬼の仮面をつけ、鬼招きの儀式により荒鬼に化身した。 |
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荒鬼(黒鬼)の登場 |
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二人の鬼が堂内を徘徊し、講堂のニワ(回廊)を渡り歩いて観客を追い回す光景が続き、堂内は佳境を迎えた。 |
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堂内を暴れ回る黒鬼 |
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コダイ(小松明)を振り回して暴れる赤鬼と黒鬼 |
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松明の火の粉を浴びると健康に過ごせるとされているために、サービス精神旺盛な鬼は、年に一度のこの日とばかり、必死で追い回し、背中を叩いて火の粉を振りかけてくれる。 |
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鬼は時に見学者の中まで身を乗り出し、闇雲にコダイ(小松明)で人を叩く。逃げまどう人や素直に打たれる人など、境内は騒乱状態となる。火の粉で衣服に穴があくのは必至なので、ラフなスタイルで参加する必要がある。 |
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松明の煙が充満する堂内 |
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カイシャク(介錯)たちもコダイ(小松明)を柱にぶつけて火の粉を散らしたり、逃げまどう人たちに「座れ!」と言いながら、頭上をなでるように松明を振り回し、火の粉を振りかけてくれる。こうなれば、覚悟するしかない。(^^; |
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光と闇と煙 |
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internetで見つけた女性参加者のコメント |
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この後、黒鬼の『荒鬼』もやってきて面をつけます。これからが、一番の見どころ、撮影のしどころ!!赤鬼と黒鬼が向かい合って松明を合わせるからみのシーンが何回もあるんです。これが見たかったんですよね〜、写真に撮ってみたかったんですよ〜゚゚・(/□\*)・゚゚・わ〜ん |
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でも、荒鬼が登場してからは、もみくちゃになってしもうて、撮影どころか見物もできなくなってしまったとです。夕方から我慢して確保した場所もなにも関係ありまっしぇん。どんどん人に押され、どんどん前に人が立ち、なにがあってるのかサッパリ!! |
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今笑った人手を挙げて・・・「は〜い」そうでしたでしょ。私も2002年に天念寺へ行きましたが私もはじき出されました。その上、上着は穴だらけ、着替えも持たずに行った事から帰りの飛行機の中ではかっこ悪いこと(@_@;) 堂内撮影は鉄格子と防火服を着て行こうと思っていますよ(^^♪ BLOGわん「天念寺修正鬼会III」
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コダイ(小松明)を交差させる災祓い鬼と荒鬼 |
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大暴れが治まると、赤鬼と黒鬼が講堂の中央に位置し、松明を頭上で交差してグルグル回る鬼の舞を始めた。 |
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観衆の前の最大の見せ場 |
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このシーンがポスターに掲載されている最もポピュラーな場面で、観衆は鬼の法舞をじっと見守るだけである。 |
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赤鬼と黒鬼の法舞 |
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回転する鬼の舞 |
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突然、世話役が鬼の目餅と呼ばれる鏡餅をばらまいたので、信者たちは鬼の法舞にかまうことなく餅に突進し、争奪戦が始まった。「鬼の目」を拾った者は、良縁がもたらされるという。餅が拾われると、鬼たちは、餅を拾った人を追いかけ回す。鬼も自分の「目」を取られまいと必死なので、「目」をとった人をコダイ(小松明)で激しく叩く。 |
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頭を叩かないようにカイシャクたちも牽制するが、鬼はコダイ(小松明)で肩や背中をバシバシ叩くので、かなり強烈な打撃を受ける。鬼の目を拾った人は、独り占めにせず、餅を割り、拾い主を増やして攻撃を分散させることがコツだという。 |
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鬼の目餅撒きに突進する信者たち |
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鬼の目餅は、2回撒かれ、その都度鬼と介錯たちが松明を打ち振りながらニワ(回廊)を廻り、拾い主を追いかけてコダイ(小松明)で背中を叩く光景が繰り返される。騒然となった堂内は最高の盛り上がりを見せた。 |
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この行事は「鬼の目」餅がバラバラになって終了する。本介錯が鬼を後ろから羽交い絞めにして止めることもあるというから、最高に気合いが入っているイベントなのである。 |
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鬼の目餅をゲット! |
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鬼の目餅撒きが終わると、信者たちは一箇所に集まり、身をかがませて合掌し、赤鬼と黒鬼がコダイ(小松明)で肩や尻を叩いて無病息災を加持した。厄男や厄女の場合は、厄が祓われるという。 |
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信者の尻を松明で打つ赤鬼 |
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最後は鬼後呪(きごじゅ)で、導師が鬼を鎮め、院主と鬼役2名が講堂の本尊・薬師如来の前で結願(けちがん)して午後11時頃、鬼会が無事終了した。 |
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「鬼鎮め」の読経の中、鬼役の僧侶2名はそれぞれホンガイシャクに背負われ退堂し、社務所に戻った。その後講堂では僧侶による縁起ものの小餅が撒かれ、その後、堂内の掃除・水洗が行われる。堂役たちは、火の気の無くなったことを確認して解散する。 |
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肩を打つ荒鬼 |
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住居:宇佐市(豊後高田市生まれ) |
昭和36年生まれ |
趣味:写真、流木アート |
若宮 秋季大祭 川組後援会 役員 |
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感動写真集第80集 「天念寺修正鬼会」 |
平成19年(2007)4月8日 作品:第13作 画像:(大35+小28) 頁数:6 総ファイル数:122 ファイル容量:19.2MB
平成12年(2000)〜平成19年(2007) 作品数:304 頁数:1,059 ファイル数:26,901 ファイル容量:3,613MB
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2007年2月24日、豊後高田市の都甲地区に伝わる『鬼会』の撮影に新しい相棒オリンパスE-500と共に行って来ました。急遽仕事となり天念寺に着いたのはPM16:30。もう既に昼の勤行の終行前で、慌てて数枚の写真を切り取りました。 |
地元に住んでいながら初めて見る鬼会。初めての相棒。緊張し、無我夢中でシャッターを押しました。香水棒を持った僧侶が舞う姿は、まるで『タップダンス』を踊っているみたいで、何とも言えない安堵な気持ちになりました。 |
しかし、鬼が登場してからは急展開。小松明の火が参拝者に容赦なく襲いかかり、この展開は予想以上に激しいものでした。千年も続くこの鬼会を、来年はもっと素晴らしいアングルで撮影したいという気持ちに駆りたてられました。 〈 完 〉 |
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僧侶が主役の祭礼はとても珍しい。香水棒、団扇、鈴などのアイテムを持ち、最後は男女面を被り、お囃子に合わせて飛んだり跳ねたりして舞い踊る姿は、普段の聖職につく真面目なお坊さんというイメージから乖離しているために、微笑ましく、親しみ深い。 |
圧巻はフィナーレの鬼の登場で、角のない鬼面をつけ、毛皮の褌の代わりに荒縄に縛られたタイツ姿の赤鬼と黒鬼が火のついた松明を振り翳して暴れ回る。 |
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堂内は火の粉と煙が充満して騒然となる。鬼の目餅という丸餅が撒かれ、争奪戦のあと、鬼が信者らの肩や尻を松明で叩き、無病息災の加地を与えて終了する。葬式仏教となった感のある都会の仏教とは違って、国東半島では未だに僧侶と地域住民が一体となって祭礼を祝う古き良き時代の仏教文化が息づいている。 |
いかめしい盛装からはじまり、垢離取りの褌姿、道服に着替えた後の法舞に鬼の衣装をまとった活劇と、七変化ともいえる僧侶たちによる鬼会は、民衆と共に祈り、祝い、楽しむ、とてもユニークな火祭りで、人と仏と神が一体化する素晴らしい村祭りである。 |
しかし、鬼が興奮のあまり一般の観客にもかなりの攻撃をしかけてくるので、見物するには火の粉を被って焼け穴が空いても良い服を着て、松明で背中を叩かれることを承知でやって来ないとショックを受けるだろう。これを東京でやろうとすれば、過激だとして中止させられる公算が高い。この点で、天念寺修正鬼会は、鬼祭中の奇祭といえるだろう。 |
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鬼が登場する南北の奇祭
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清原さんが天念寺の鬼会を激写した同じ2月24日(土)、私は岩手県奥州市の天台宗・黒石寺(こくせきじ)で行われた蘇民祭(そみんさい)を取材し、既に「黒石寺蘇民祭」として発表した。 |
黒石寺でも2月24日午後10時から同じ薬師如来の前で、裸参り、柴燈木登(ひたきのぼり)、別当登(べっとうのぼり)、鬼子登(おにごのぼり)、蘇民袋争奪戦の五つの行事が夜を徹して行われたが、こちらにも鬼が登場する。 |
鬼子登という儀式で、数え年7歳の男児2名が鬼子(おにご)として麻衣(あさごろも)をまとい、木製の鬼の面を逆さに背負い、強力(ごうりき)と呼ばれる檀徒の丈夫な大人におんぶされて薬師堂にのぼるのである。 |
鬼子が背負う逆さ鬼面/黒石寺蘇民祭 2007.2.24
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黒石寺の方は、神道に加え、東北独特の修験道との習合があり、祭礼の色合いが異なるが、川中の垢離取りや、炎と鬼が登場するのは同じ趣向である。しかも炎により魔を打ち祓い、厄を落とす点や、鬼が神仏の化身として邪悪を打ち払う役割を担うのも同じコンセプトである。北と南に遠く離れていても、天台宗の初薬師にまつわる祭礼にこのような共通点があるのは、とても興味深い。 |
平成19年(2007)4月8日 監修 和田義男 |
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