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▼ 九十九里浜・釣ヶ崎の砂浜でみっちりと準備運動を行った参加者たち44名は、宮嵜道彦と長尺の青竹の御幣(ごへい)を先頭に海に向かった。 |
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▲▼ 梅雨の真っ最中ではあったが、幸いにも昨夜来の雨は止み、低い層雲の間からこぼれる柔らかな光を浴びながら、行者たちは遠浅の浜を沖の禊場(みそぎば)に向かって歩を進めた。 |
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▲▼ 筆者は家を出るときから半ズボンにビーチサンダルの軽装で、ジャブジャブと海に入り、彼らの後を追った。 |
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沖の禊ぎ場に向かう
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いざゆかん みそぎふんどし なつどとう |
Surging waves of summer, let's go to the purification wearing a loincloth. |
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▲▼ 沖合に向かって100mは進んだのではないだろうか。一行は磯波が盛り上がっては砕ける場所に到着した。 |
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▼ 太平洋の荒波に晒される禊であることから、万一に備えてライフセーバーが待機しており、禊の現場では久松広樹・権禰(ごんねぎ)が後方から行者たちを見守っていた。 |
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久松広樹・権禰宜 |
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▲▼ 道彦の後ろに並んだ行者たちは、紙の大祓詞(おおはらえことば)を広げ、道彦といっしょに斉唱(せいしょう)を始めたが、開始早々大波に見舞われ、万歳スタイルでジャンプしながら波をやり過ごす姿が見られた。 |
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ふんどしの みをそぐみそぎ なつどとう |
The surging waves of summer, purification as if scraping each body of loincloth. |
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▲▼ 沖に台風が来ているわけではないが、東の海上に停滞した梅雨前線(ばいうぜんせん)がもたらす風が波を起こし、沖から浜辺にうねりとなって押し寄せてくる。遠浅の海岸に達すると、トロコイダル・ウェーブと称する巻波(まきなみ)が立ち上がり、やがてその絶頂で砕け散り、白く泡だった平らな水塊が岸を洗う。行者たちは、その波に翻弄されながらも、波間(なみま)に紙をかざし、天地(あめつち)の神に向かって大祓詞(おおはらえことば)を唱えた。 |
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波を乗り越えながら |
大祓詞 |
を斉唱 |
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▼ 参加者たちに配られた大祓詞(おおはらえことば)は、大寒禊のときと同様のもので、フリガナが付されているので誰でも読むことができる。大祓詞は、祓戸四神のリレーにより、罪や穢(けがれ)を地中深く運んで放逐し、清めていただくよう八百万(やおよろず)の神々に祈願する祝詞(のりと)であることが分かる。 |
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ちなみに、仏教では経典(お経)を読み上げる読経(どきょう)となるが、インド(天竺)発祥の仏教は中国を経由して日本に伝わったため、経典は全て漢文(中国語)で書かれており、日本語訳がないために意味が分からないのが難点である。般若心経を思い浮かべれば分かるように、フリガナがあれば読み上げることはできるが、何を言っているのか全く理解できない。 |
神道の祝詞(のりと)は、全て大和言葉で書かれているために意味が良く分かり、古語であってもフリガナがあれば誰でも読み上げることができるので、日本固有の宗教の有り難さを実感する。なお、仏教と違ってキリスト教は聖書(バイブル)の日本語訳があり、日本人は日本語で祈りを捧げている。 |
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細長く折りたたまれて配られた |
大祓詞 |
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▼ 筆者の後ろを振り返ると、沖に進む勇気のない女性たちが、浅いところで大祓詞を唱えていた。写真下をよく見ると、褌一丁の男性が水際で佇んでいるのが見える。何らかの理由で沖に行くのが憚られたのであろう。 |
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その後ろには石鳥居が見え、広場に多数の車が駐車している。更にその後ろには、禊会場のランドマークとなる11階建ての白いビルがポツンと建っている。このビルは、国道からはのっぽビルに見える。 |
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▲ 子供の姉妹が筆者の後ろにいて、波が来るたびに歓声をあげていた。子供たちにとっては非日常の経験であり、だからこそ海水浴は楽しいのだろう。 |
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▼ 最前線の行者たちは、大寒禊と同様に波に襲われるたびに波をやり過ごす動作を余儀なくされ、大祓詞を唱えることに集中できなかった。中には、転んだり、紙が破れて流出してしまった人も見られた。 |
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▲▼ 写真上下は、背丈を超える大きな二段波の襲撃を受けた瞬間を連写したうちの3枚である。この日の波は、大寒禊の波よりも大きく、行者たちの頭上で砕け、万歳スタイルでジャンプして波をやり過ごす姿が見られた。 |
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びゃっこんの どどんとなみの なつみそぎ |
Summer purification of white loincloth, the shock of the wave. |
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▼ 写真下の3枚は、現地で初めてお会いし、知り合った曽根由香さんからお送り頂いた作品である。曽根さんは若い女性で元気があり、私よりも沖合に出て、200mmのズームレンズで激写されたもので、とても良く撮れている。 |
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磯波に翻弄される行者たち
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撮影:曽根由香 |
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▼ 私は半ズボンの先が水に浸かるところまで進んだが、オリンパスE-30にED 12-60mm ( 24-120mm相当 )の標準ズームをつけていたので、全体像しか切り取れず、完全に脱帽である。彼女に習って、次回は更に肉薄して激写したいと思う。 |
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波の一撃!
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撮影:曽根由香 |
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▼ 曽根さんからは、当日の夜、次のメールを頂いた。是非、感動写真集の仲間にお入り頂きたいと思っている。
「和田さんのホームページ見ていて、今日は和田さんに逢えるかもしれないと思い…ドキドキしながら出かけたかいがありました。これから写真を眺め、水曜日の夕方に郵送出来る様に頑張ります。
いつも素晴らしい内容で楽しみに見ていますので…私の写真で大丈夫かしら…?とプレッシャーですが、和田さんのホームページに私の写真が仲間入りしてくれるかもしれないことを嬉しく思っています。」 |
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父に抱きつく男の子
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撮影:曽根由香 |
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▼ 磯波に翻弄された禊は10分ほどで終了し、青竹の御幣を先頭に、濡れ鼠状態の行者たちが引き上げてきた。 |
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古代より日本人は何か悪い事があると水を浴びる風習があり、神話にも伊弉諾尊(いざなぎのみこと)が黄泉(よみ)の国から帰るときに川原で水を浴びたことが記されている。 |
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特に、6月30日にお祓いをすることは、平安時代から行われ、歌にも「水無月の夏越の祓いをする人は千歳の命延ぶというなり」(拾遺集・詠み人知らず)とあり、現代も日本全国で夏越の祓が行われている。 |
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禊も祓いの一つで、白褌一丁になり、水をかぶって穢れを取り除く行事は、冬に限らず、夏越の祓(なごしのはらえ)の行事の一環として行われる例は、全国のあちこちでみられる。しかし、海に身を沈めて夏越の禊をする例は、玉前神社以外には聞いたことがない。もし、同様の行事があれば、是非お知らせ願いたい。 |
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▲▼ 神気(しんき)漲(みなぎ)る神話の地・釣ヶ崎海岸沖合での勇壮な海中禊に参加した人たちは、心身共にリフレッシュした様子で引き上げてきた。 |
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不景気が運んでくる悪い気や知らず知らずに身についた災いを祓うことができた行者らの表情は、とても清々しく、明るかった。 |
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