敦煌南西70kmの地に陽関がある。紀元前93〜94年頃、漢の武帝が玉門関とともに設置した関所である。ある時期には玉門関よりも重視されたといわれるが、後漢になると廃止された。しかし、唐代には西域南道（天山南路の南道）の起点としてふたたび繁栄した。

　この陽関については、唐代の詩人・王維（おうい）（701?〜761?）が詠んだ有名な詩「送玄二使安西」があり、「西の方陽関を出づれば故人無からん」は人口に膾炙(かいしや）する。

　この詩は、安西都護府（あんせいと・ごふ）へ帝（みかど）の使者として旅立つ友人・元二（げんじ）を渭城（いじょう）まで送ってゆき、いよいよ西域への関所となる陽関へ向かう日の朝、渭城で別れの杯を交わしている情景を詠ったものである。護府は現在の新疆ウイグル自治区にあった町で、渭城は長安の北西にあった町。

　玉門関は、中国の漢代に置かれた関所で、武帝のとき河西回廊を保護するために北側に万里の長城が築造され、前108‐前107年頃その西端に設けられた。南の陽関とともに西方に通ずる重要な関門で、敦煌の北西100kmに遺跡が残っている。

　玉門関は、唐代の詩人・王之渙（おうしかん）（696-?）が涼州詞の中で詠んだ「春風度（わた）らず玉門関」により、名が広く知られている。この詩は、玉門関の置かれた辺境の地で羌（きょう）族との戦いに明け暮れる兵士の悲しみを詠ったもの。

　玉門関は、西域に通じるシルクロードの北道と中道に行く関所で、ここから西に延びる長さ50km、幅７mの古道では、かつてシルクロードを往来した人々の足跡がかすかに見分けられるという。

　玉門関の西方５kmに、今も完全な形に保たれた漢代の長城がある。砂と石と葦（あし）で築かれたもので、狼煙台（のろしだい）も残っている。