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上町の山車人形は日本神話の英雄・日本武尊。東京の浅草・福井町から明治5年(1872)に購入したという。江戸末期から明治初期の作と推定されるが、作者は分からない。 |
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他の四町の人形とは違ってリアルさに大きな特徴がある。見世物の本場であった浅草奥山近辺では、幕末の安政期(1854〜59)頃からリアリティを追求した活人形(いきにんぎょう)が流行っており、その流れを汲む人形師が手がけた作品ではないかと推測されている。 |
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リアリティを追求した人形(撮影:2006.5.2)
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二本の矢を手に三巴紋(みつどもえもん)蒔絵(まきえ)の朱鞘(しゅざや)の剣(つるぎ)を背に負って立つ凛々しい姿。
表着(うわぎ)は白地銀襴(しろじ・ぎんらん)の雲立湧紋(くもたてわくもん)の狩衣(かりぎぬ)。袴は蜀江文(しょっこうもん)の
錦で、東国遠征の途中と見られている。 |
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高い山車の上に載っていたことを思わせる伏し目がちの視線。二重顎に面長の顔は中年で、作者の好みが出ている。今年、表着(うわぎ)が新調され、より一層、気品あふれる凛々しい姿が強調されている。 |
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氏子五町(旧祭礼町)の西端に位置する森下町祭典事務所は、東京都有形民俗文化財の旧稲葉家住宅にあり、今まさに満珠を海に投げ入れようとしている武内宿禰(宿祢)を展示している。 |
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江戸時代から伝わる格納箱(撮影:2005.4.29)
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武内宿禰は、嘉永元年(1848)名人形師・法橋*(ほうきょう)仲秀英(なか・しゅうえい)が作ったもので 、神田三河町四丁目(現司町二丁目)が江戸神田祭に三十一番目の山車人形として巡行していたものを明治のはじめ頃に森下町が購入した。平成15年(2003)に作成された神田神社・大鳥居信史宮司の鑑定書がある。 |
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*法橋:最上位の人形師に与えられる称号。 |
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一年ぶりの対面「武内宿弥之人形」(撮影:2005.4.29)
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平成15年(2003)に江戸開府400年を記念して千代田区で開催された江戸天下祭りには、森下町の山車と共に出展され、この人形は日比谷公園の御仮屋に展示されて人気を博した。 江戸天下祭 |
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写真下の黒シャツの方がお世話になった山車人形師法橋仲秀英研究会会長・祭狂斎みち藤さん。森下町人形保存委員会の委員で、関東一帯の祭り関係者と交流し、幅広い人脈を持つ。毎年、3日の本祭りには、みち藤さん宅に各地から同好の士が多数訪れる。 |
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「武内禰宿(宿禰) 御袴 嘉永元年製作」と書かれた衣装箱(撮影:2005.4.29)
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祭狂斎みち藤さん |
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みち藤さんのご厚意で、オリジナルの袴が入っている衣装箱を開けてもらった。中にはボロボロになった長絹(ちょうけん)が保存されており、江戸末期に生まれたこの山車人形の160年の歴史の重みを感じた。衣装箱の蓋には嘉永元年製作と墨書されており、神田神社宮司の鑑定を裏付けている。 |
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保存されているオリジナルの袴(撮影:2005.4.29)
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萌黄威(もえぎおどし)の鎧に冠、紺地銀襴(こんじ・ぎんらん)の表着(おもてぎ)を鎧の上に羽織り、左手で太刀を握り、右手に高く掲げた満珠(まんじゅ)を今まさに海中に投げ入れようとしている凛々しい姿。何時見ても表情が生き生きとしており、名作中の名作である。 |
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着付けが完了した武内宿禰(撮影:2005.4.29)
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平成17年(2005)4月29日武内宿禰を撮影中、仲秀英の曾孫(ひまご)に当たる斉藤道子さん(東京都町田市)が来訪。曾祖父の作品を一目見るためにやって来たという。幸運にも感動の対面に立ち合うことが出来た。 |
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仲秀英の曾孫さんと記念撮影(撮影:2005.4.29) |
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仲秀英のお孫さん |
村野公一さん 祭狂斎みち藤さん 御長老の清水さん |
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豪華保存本である「四00年目の江戸祭禮」は徳川家康が江戸幕府を開いてから400年の節目に当たる平成15年(2003)に催された江戸天下祭など4つのイベントを一冊に凝縮したもので、私の写真が32枚収録されている。江戸天下祭に山車と共に出展された武内宿禰は、A4大の大きさで収録されており、人気の高さが伺い知れる。 |
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