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平成23年(2011)8月6日(土)から8日(月)迄の三日間、山形県鶴岡市に鎮座する出羽三山神社で錬成修行道場が開催された。 |
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出羽三山は、山形県庄内地方に広がる羽黒山(はぐろさん)(414m)月山(がっさん)(1,984m)湯殿山(ゆどのさん)(1,504m)の総称で、修験道を中心とした山岳信仰の場として、現在も多くの修験者や参拝者を集める。 |
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1,300km2に13万人が暮らす鶴岡市は、山形県の日本海沿岸南部に広がる庄内(しょうない)地方に位置し、山形市に次ぐ県内第2の都市である。江戸時代には、鶴岡藩(通称
庄内藩)の城下町として盛えた庄内南部の街であり、郊外には庄内米やだだちゃ豆の農地が広がる。 |
緑陰の桃聖見上ぐ羽黒山 |
Mt. Haguro,
looking up Tohsei in the shade of trees. |
りょくいんの とうせいみあぐ はぐろさん |
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出羽三山神社の創建は、推古元年(593)に蜂子皇子(はちこのおうじ)が羽黒大神を勧請した事が始まりという。彼は、羽黒山に寂光寺を開山すると、月山と湯殿山を次々に開いて出羽三山修験の祖となった。 |
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羽黒山頂には芭蕉の銅像と三山巡礼句を記した句碑がある。「奥の細道」の中でも出羽三山は、旅の最も重要な場所のひとつとして記述されている。最上川を下って狩川経由で羽黒山に入った芭蕉は、続いて月山、湯殿山にも登拝して、それぞれ、「涼しさやほの三日月の羽黒山」「雲の峰いくつ崩れて月の山」「語られぬ湯殿にぬらす袂かな」の三山巡礼句を残している。 |
雲の峰即身仏の湯殿山 |
The ridges of summer clouds,
Mt. Yudono the mummificated monks. |
くものみね そくしんぶつの ゆどのさん |
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湯殿山(1,504m)は、出羽三山の南端に位置し、その北東約5kmの月山(1,984m)に連なる霊山である。湯殿山北側中腹の梵字川(ぼんじがわ)の侵食によってできた峡谷に、五穀豊穣・家内安全の守り神として崇敬される湯殿山神社(1,100m)がある。女性の秘所に似た霊巌(れいがん)が御神体で、不思議なことにその頂上から湯が流れ出ており、社殿のない神社として知られる。 |
出羽三山の奥宮とも呼ばれ、「語るなかれ」「聞くなかれ」と戒められてきた清浄神秘の世界であり、羽黒山と月山で修行をした行人(ぎょうにん)がここで仏の境地に至るとされている。即身仏の修行地として知られる仙人沢(1,000m)は、湯殿山本宮の東方、徒歩約20分の山腹にあり、赤い大鳥居と湯殿山参籠所がある。 |
月山にのぼる小径や草葎 |
The overgrown weeds,
a path for climbing Mt. Gassan. |
がっさんに のぼるこみちや くさむぐら |
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湯殿山本宮前の小橋を渡り、左手をのぼって行くと、芭蕉の句碑があり、その奥が月山登山道になっている。 |
▼ 芭蕉の句碑には、「語られぬ湯殿にぬらす袂(たもと)かな」の有名な句が刻まれている。「奥の細道」の本文では、「そうじてこの山中の微細、行者の法式として他言する事を禁ず。よりて筆をとどめて記さず。」とある。 |
緑さす芭蕉の句碑や登山道 |
A mountain trail, Basho
haiku monument with fresh verdure. |
みどりさす ばしょうのくひや とざんみち |
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▲ 筆者も御祓を受け、本宮に入って参拝したが、御神体に触れたり、湯を口に含んだり、背部にのぼって頂部から湯が湧き出る様子を観察したり、霊巌が鉄分を含んだ結晶体であることを確かめたりした。 |
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常識では、御神体に触れることはタブーなのだが、ここでは許されているのが何とも有り難い。芭蕉も感激し、問わず語らずを実践したので、筆者も芭蕉に習い、神社の説明以外は書かないことにした。 |
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二日目、月山から山駈けして湯殿山参籠所に到着した修行道場の行人(ぎょうにん)たち56人には、遅い昼食後、ゆっくりと休む暇もなく、参籠所を出立した。これから歩いて湯殿山本宮まで行き、含満ノ滝(かんまんのたき)で滝行を行った後、本宮で正式参拝を行う。 |
万緑の赤橋渡る白袴 |
Fresh
green trees,
crossing
a red bridge wearing a white hakama. |
まんりょくの あかばしわたる しろばかま |
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午後3時過ぎ、湯殿山本宮の境内に到着。女性たちは、更衣室で滝行用の白衣に着替えたが、男性は空き地で褌一丁になった。 |
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滝行の装束は、男性は越中褌一丁の裸形、女性は白の上衣に半股引(ハーフパンツ)。男女とも出羽三山の朱印を押した白鉢巻を締め、白足袋
(靴下)・草鞋(わらじ)を履いている。 |
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▼ 鳥舟によるウォーミングアップが終わると、梵天(ぼんてん)を持つ佐藤篤班長を先頭に、道彦、助彦、行人の順に一列縦隊となり、駆け足で含満ノ滝に行き、滝行が行われた。 |
湯殿山白褌の滝行人 |
Mt. Yudono,
ascetics of white loincloth
beneath a waterfall. |
ゆどのさん しろふんどしの たきぎょうにん |
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▲▼
午後4時前、含満ノ滝の雪解水が容赦なく膚を刺す滝行が終わった。夏にもかかわらず、鳥肌を立てている人もみられた。長いと思っていたが、滝行は正味20分ほどだった。 |
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含満ノ滝のそばには、空き地がなく、行人たちが更衣できないことから、湯殿山本宮の境内で裸になり、褌一丁で片道約100mの沢を往復するという珍しい光景となった。 |
滝の音や褌一丁沢下り |
The sound
of waterfall, going down the
stream wearing a fundoshi
loincloth. |
たきのねや ふんどしいっちょう さわくだり |
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▲ 沢駆けには足袋草鞋(たび・わらじ)が欠かせない。草鞋も結構丈夫で、頼りになる履き物であるが、足指が草鞋の前方にはみ出てしまう欠点がある。そのため、足袋(靴下)草鞋とすることで、ダメージを防ぐようにしている。 |
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行人たちは、整理運動の鳥舟をみっちりと行ったあと更衣し、裸足になって御祓所に整列して御祓を受け、人形(ひとがた)による厄払いを行った後、晴れて湯殿山本宮に踏み入り、御神体に対面して正式参拝した。 |
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滝行者たちは、30分ほどで正式参拝を済ませ、足袋草鞋を履いてもと来た道を引き返し、午後5時半ころ湯殿山参籠所に戻った。 |
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焼印の杖の古びし滝行者 |
The
ascetic of waterfall,
the old stick with brands. |
やきいんの つえのふるびし たきぎょうじゃ |
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湯殿山参籠所の御神前で護摩祈祷の申込が行われた。自分で神木に願意・住所・祈願主をしたためておくと、神職の方で紙に書き写し、護摩祈祷のときに、祭主が読み上げながら神木(護摩木)を炊き上げてくれる。 |
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今回の錬成修行道場の責任者は、吉住登志喜・禰宜(ねぎ)で、護摩祈祷の祭主である。筆者の電話とファックスによる密着取材の事前申込を快く受け入れて下さった方である。 |
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御神前の間には、錬成道場の行人たちのほか二組の団体が着座し、午後6時20分ころから天井の照明が落とされて護摩祈祷が行われた。燃え上がる炎が神の化身の如く見えた。 |
夏深山託す護摩火や神のごと |
Deep
summer mountains, holy fire
of hope standing like a god. |
なつみやま たくすごまびや かみのごと |
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▼
3日目、午前5時起床。5時半すぎ湯殿山参籠所を出発し、御沢駆け・滝行・湯殿山神社本宮参拝に向かった。徒歩8分ほどで御沢橋南端に到着。太田道彦が法螺を吹鳴しつつ橋の南東端から梵字川の沢に入った。 |
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湯殿山夏早朝の御沢駆 |
Mt. Yudono,
going along a stream
early morning
in summer. |
ゆどのさん なつそうちょうの おさわがけ |
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▲ 一行は一列縦隊になり、太田道彦を先頭に男性行人が進み、その後を女性行人が追った。手を貸さないと危ない箇所が出現する毎に班長たちが張りつき、最後の人が通過するまで支援してくれるので、女性でも安全に通過することが出来た。 |
沢に入って50分ほど経った頃、二筋の滝が見えてきた。これが目指す御滝神社(おたきじんじゃ)で、滝そのものが御神体となっている。これからこの聖なる地で、錬成修行道場最後の修行となる滝行が行われた。 |
滝行者褌一丁雪解水 |
Melted
snow running,
the ascetic naked
with a loincloth beneath a waterfall. |
たきぎょうじゃ ふどしいっちょう ゆきげみず |
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▲▼ 御滝(おたき)は、縦縞模様の赤く鮮やかな岩壁の上端から落差10mほどの雪解水(ゆきげみず)が二筋流れ落ちている。向かって左が雌滝(めだき)、
右が水流の強い雄滝(おだき)である。崖の表面を彩る赤色模様は、御神体と同様の鉄分を含んだ結晶体と思われる。 |
湯殿山御滝行人濡褌 |
Mt. Yudono,
the wet fundoshi loincloth
of the ascetic of Otaki falls. |
ゆどのさん おたきぎょうにん ぬれふどし |
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▲▼
鳥舟が終わると、昨日の含満ノ滝と同じように、佐藤篤班長が真っ先に雄滝に入って滝行を行い、錬成道場最後の修行が始まった。 |
滝行を終えて滝壺から上がる佐藤さんを見ると顔面が赤らみ、目が充血していた。傍目には楽そうに見えても、かなり厳しい水行である。一部、鳥肌が立っている。雪解水は英語で書くと
melted snow
つまり「解けた雪」ということなので、夏でも冷たい。湯殿山の滝行は、一回の時間がかなり長く、身体への負担は予想外に大きい。 |
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▼ 雄滝の水流は、その流量と相まって予想外に強く、水圧に屈して倒れる初心者も見られたが、佐藤助彦の支援で、男性行人の滝行は、滞りなく進められた。 |
迸る霊気に打たる滝行者 |
An ascetic
of
waterfall, purifying himself
with outpouring sacred energy. |
ほとばしる れいきにうたる たきぎょうじゃ |
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女性行人たちは、太田道彦の支援を受けて雌滝に打たれた。含満ノ滝では男女が並んでいたので、双方を撮影できたが、御滝では、雄滝の男性を撮影していると、雌滝の女性は撮影出来ないので、男性主体の取材となってしまった。 |
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ハワイから参加した奥山佳子さんの滝行は、親切にも男性行人が奥山さんの番が来ると教えてくれたお陰で、かろうじて撮影の約束を果たすことができた。 |
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この女性は、唯一男性用の雄滝に打たれた方で、激写することができきた。赤壁(せきへき)を背に静かに合掌する姿は、神々しく、つややかな黒髪が美しかった。 |
黒髪や滝に打たれつ合掌す |
Black hair,
purifying herself beneath
a waterfall joining her palms togerther. |
くろかみや たきにうたれつ がっしょうす |
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約30分にわたる滝行が終わり、滝の下で整理運動の鳥舟が行われた。夏とはいえ、鳥肌が立った男性もいた。また、気分が悪くなった女性をベテランの今野和子さん(福島市)が介抱するなど、雪解水を浴びる滝行の厳しさを感じたが、行人たちは、互いに励まし合い、助け合いながら無事に滝行を終えることが出来た。 |
鳥舟の後、行人たちは、
道彦に合わせて御滝に拝礼し、三日間にわたる錬成修行道場の全課程を終了した。 |
行人たちは、更衣の後、最後の難所である梯子場(はしごば)を登り、湯殿山本宮に向かった。長さ約30mの鉄梯子は、ほぼ垂直に取り付けられており、梯子が外れたり、足を踏み外したりすると大事故になる。 |
法螺の音の響き渡るや夏深山 |
Deep
summer mountains, the sound of
a conch shell resounding far
away. |
ほらのねのひびきわたるや なつみやま |
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湯殿山本宮に無事到着した一行は、昨日と同様、全員裸足になり、御祓のあと、御宝前ごほうぜん(御神体の前)で正式参拝をしたのち、全てのカリキュラムを終えて、帰途に着いた。佐藤助彦の吹く法螺の音が夏の深山に響き渡った。 |
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高さ18mの巨大な大鳥居/湯殿山仙人沢 |
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語られぬ湯殿にぬらす袂かな 芭蕉 |
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太田慶春 |
道彦 |
を先頭に |
滝行 |
に向かう56人の行人たち
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梵天 |
を先頭に滝行の開始 / |
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含満ノ滝 |
15:32 |
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まだまだ続く滝行 / 雄滝 2011.8.8 07:12
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