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午後10時から裸参りが始まるので、1時間前から場所取りを行い、昼間、山さんの案内で下見していたので、大相撲でいえば砂かぶりの特等席をとり、暗闇のなかで開始を待った。 |
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蘇民祭では、五つの行事の開始の合図として鐘楼堂の梵鐘が鳴らされる。午後10時になり、除夜の鐘の響きが聞こえると、いよいよ蘇民祭が始まったという緊張感が涌いてきた。やがて、角燈(かくとう)の明かりが見えてきて、裸参りの行列が瑠璃壷川(るりつぼがわ)(山内川(やまうちがわ))に下りてきた。 |
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瑠璃壺川 |
に下りてきた |
総代 |
を先頭とする行列 |
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裸参りは、総代を先頭に隊列を組み、厄年連中、一般祈願者、善男善女が角燈(かくとう)と呼ぶ提灯を持ち、「ジャッソウ」「ジョヤサ」の掛け声をかけながら、瑠璃壺川(るりつぼがわ)の水垢離場(みずごりば)に入り、3度水を被って身を浄め、薬師堂(本堂)、妙見堂を巡り、五穀豊穣、災厄消除の祈願を行う。これを3度繰り返す。 |
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昇ちゃんが六尺褌姿で登場。にこやかに笑いながら右肩に水を掛けた。このスタイルが昇ちゃん流である。 |
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褌(ふんどし)をしている人も、3度目の水垢離には褌を外して素裸で水を被る*のが伝統の作法で、裸参りの参加者約100名のなかで、今年は昇ちゃんほか1名がそれに従った。 |
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*素裸で水を被る:翌年(2008)からこの伝統の作法は変更され、たとえ境内であっても蘇民祭開催中に褌を外すことは、親方を除いて全面的に禁止された。 |
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写真提供:長谷川昇司 2006.2.4 |
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昇ちゃんの水垢離は常に笑顔なので、余裕の現れとも思われるが、他の誰も真似の出来ない芸当である。 |
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日蓮宗の修行僧は後頭部に水を被るのが作法であるが、ここではその方法は人様々。肩や胸に被る人が多く、KUMAちゃんは頭から被っていた。これが一番辛(つら)いやりかただろう。 |
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六尺褌一丁の裸の集団が次々と水垢離場(みずごりば)に入り、手桶で水面をたたいたり、撮影至近で水を被ったり、中にはわざと水を散らしているのではないかと思われる人もいて、全身ビショビショになり、カッパを着て撮影すれば良かったと後悔した。 |
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2台の愛機は濡れ鼠になったが、幸いカメラの故障はなく、レンズをハンカチで拭きながらの撮影となった。しかし、かぶりつきの撮影は、遠くから望遠で写すよりも格段に迫力があるので、良い写真を撮ることができた。 |
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「シャッソウ、ジョヤサ」とは? |
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裸参りの行者たちは、盛んに「シャッソウ、ジョヤサ」を叫び、気合いを入れて冷水を浴びていた。「ジャッソウ」は「邪正(ジャソウ)・邪(ジャ よこしま)を正(ソウ ただす)」を意味し、「邪を正す」、つまり邪心を祓うこと。「ジョヤサ」は「常屋作(ジョヤサ)・とこしえの住まいを作る」を意味し、「家内安全」を祈願するものという。 |
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親子の寒中水浴 |
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「備後風土記(びんごふどき)」の中に、蘇民信仰の以下の逸文が残されている。 |
北海の武搭神(たけあきのかみ)が南海の神の娘をめとろうと旅に出、途中で日が暮れた。そこに将来兄弟二人が住んでいた。兄の蘇民将来(そみんしょうらい)は大変貧しく、弟の巨旦将来(こたんしょうらい)は裕福で家や倉を百余りも持っていた。武搭神は弟に一夜の宿を借りようとしたが断られ、やむなく兄の家に泊めてもらった。兄は粟(あわ)の飯でもてなした。 |
後に武搭神(たけあきのかみ)は八人の王子と帰る途中将来の所に寄り「かつての報いをしよう。おまえの子孫がその家にいるか」と問うと、「妻と娘がいる」と答えた。すると「茅の輪(ちのわ)」を腰に着けることを命じた。その夜、神は蘇民と妻、娘を除いてすべてを滅ぼしてしまった。 |
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そして、「私は須佐之男命(すさのおのみこと)なり、後の世に疾病あらば蘇民将来の子孫といい、腰に茅の輪をつける者は疫を免れるであろう」と申された。 |
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武搭神(たけあきのかみ)・須佐之男命(すさのおのみこと)・牛頭天王(ごずてんのう)・薬師如来は同一神仏であるという。この逸話に神仏混淆(しんぶつこんこう)の歴史が色濃く残されていて、興味深い。 |
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頭から水を被る人 |
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