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我は海の子切手/白褌の少年 |
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「白褌(びゃっこん)」は、普通「しろふんどし」と呼ばれる白い褌のこと。海の風景の中で思い浮かぶのは、左の切手に描かれているように、白砂青松の海辺で無心に遊ぶ水褌(すいこん)の少年たちである。 |
団塊の世代に生きる北舟にとって、褌は、俳句と同じように江戸の昔から続く伝統文化であり、日本男子のアイデンティティ(自己同一性/日本人らしさ)を最も強く感じる物である。少年時代、黒潮洗う高知県須崎市の富士ヶ浜や新庄川で泳ぐときは、フリチンか黒猫褌(郷里では「いどくい」)だったので、白い水褌をキリリと締めた上級生が羨ましかった。 |
普通泳ぐときは、赤褌(あかふん)が多いといわれるが、郷里では切手のように白褌(しろふん)ばかりで、赤褌は殆ど記憶にない。漁師町だったので、銭湯に行けば越中褌のおじさんたちが大勢いて、褌が珍しくない環境で育ったことが、北舟の原点になっているかもしれない。 |
日本の現代社会は、西洋文化に席巻され、銭湯や温泉・サウナに行ってもパンツやブリーフばかりで、褌をしているのは奇人変人に見られる始末だが、最近、越中褌が日本の気候風土に適合した涼しく清潔なエコ下着として静かなブームになっており、ときおり、若い人が褌を締めているのを見かけるようになったことは、とても嬉しい。 |
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ふんどし |
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褌の長老夏の元気かな |
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Golden ager of loincloth,
full of vitality in summer. |
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夏越の釣ヶ崎海岸禊 |
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白褌と名付けし句集夏の海 |
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The summer sea,
an anthology of haiku
named Byakkon the white loincloth. |
びゃっこんと なづけしくしゅう なつのうみ |
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平成13年(2001)10月、播州の秋祭を見て裸祭の素晴らしさに目覚めて以降、下着の褌は裸祭を盛り上げる祭褌に昇華し、筆者の褌へのこだわりが更に強くなり、誰もやっていないこともあって、裸祭の密着取材と共に意識的に褌句を詠みはじめ、10年で180句に達した。 |
▲▼ 上下の写真俳句は、越中褌と六尺褌の違いがあるものの、いずれも白褌を詠んだもの。写真下の白褌神輿(びゃっこんみこし)は、切手の少年と同じ水褌(すいこん)である。 |
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北舟の英訳写真俳句「海の風景」のベスト版アンソロジー(句集)を「白褌 BYAKKON 」と名付けた理由は、こんな筆者のノスタルジア(郷愁)によるものである。 |
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うなさか みこし |
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海坂に向かふ神輿や白ふどし |
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White fundoshi-loincloths,
the portable shrine going to the sea horizon. |
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江ノ島白褌神輿 |
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歌舞伎を図解した劇場訓蒙図彙(しばいきんもうずい)は、筆者・式亭三馬(しきてい・さんば)により享和3年(1803)に刊行されたものだが、訓蒙(きんもう)(幼童や無知の人を教え導く意)の目的で、芝居の世界のあらゆる事柄を分類し、それぞれに図を添えて書かれたものである。その中に、殺陣(たちうち)という項目で、褌一丁の侍たちによる殺陣(たて)の図解がある。 |
各頁の見出しに配した裸の侍の殺陣(たて)のイラストは、この中から選んだものだが、式亭三馬は、白褌の侍を白黒で描いているので、筆者が勝手に彩色したものである。 |
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昨年、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)第2回大会で2連覇を果たした日本代表の呼称は、サムライジャパン SAMURAI JAPAN で、原辰徳日本代表監督が命名したという。今年のワールドカップで活躍した日本代表は、サムライブルー SAMURAI BLUE と自称し、最後まで諦めない奮闘ぶりに各国メディアから賞賛された。 |
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このように、侍 サムライ SAMURAI は、国内外を問わず、日本人を象徴するキーワードとなっているのが嬉しい。 |
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やまかさ さきぼう しろふどし
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山笠や気合の先棒白褌 |
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博多祇園山笠 |
Yamakasa festival, the heated guys
of loincloth carrying the front mikoshi. |
平成16年(2004)7月14日(水) |
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博多祇園山笠(福岡県福岡市) |
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▲ 日本の裸祭は、白褌が殆どである。それは、多くの祭礼が清廉潔白を旨とする神社の神事として行われるためである。神事に先立って氏子たちの禊(みそぎ)が行われるが、その装束は、純白の白装束が決まりとなっているため、女性は白衣、男性は白褌を着用することが多い。裸神輿の場合は、そのまま渡御に移ることになる。 |
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▼ 神社では、還暦の厄落(やくおとし)などに赤褌(あかふん)が用いられることがあるが、色柄褌は、特殊な場合にしか許されない。一方、寺院の祭礼は、そのようなこだわりが少なく、写真下の「盛岡舟っこ流し」のように、赤褌が用いられたりする。裸祭に参加する場合は、指定された装束を守るのがエチケットである。 |
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りゅうずぶね あかふん
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竜頭舟赤褌どもが夏川原 |
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盛岡舟っこ流し |
A summer boat with a dragon-head,
Guys of red loincloth at the river shore. |
平成20年(2008)8月16日(土) |
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流し舟の進水/北上川(岩手県盛岡市) |
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北舟の俳句 |
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和田北舟の俳句は、正岡子規をお手本とする写生句である。彼の弟子・夏目漱石もそうだが、「ほんの軽い心持ち」を大事にし、それを俳句に表現している。漱石の晩年の句を評して「誠を吐露する句」「人に迫ってくる」(古宮豊隆/漱石全集)などと権威付けるのは勝手だが、ご本人たちの姿勢は一貫して「軽みや滑稽」を目指していた。しかも、芭蕉や子規は、純真な子供目線で詠む俳句が良いといっている。私はそれを忠実に実践してきた。世界の旅の写真館として、旅先で撮影した写真にあわせて発句するのは、とても楽しく、「奥の細道」を旅する芭蕉になった気分を味わうことができる。 |
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なつかわ ぐれん
ながしぶね
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夏川を紅蓮に染むる流舟 |
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盛岡舟っこ流し |
The drifting boat dying the summer river crimson red. |
平成20年(2008)8月16日(土) |
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火焔をはく竜頭舟/北上川(岩手県盛岡市) |
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「俳句は芸術か文学か」などという難しいことはさておき、俳句は、川柳と共に江戸時代から続く大衆芸能であり娯楽である。僅か17音で完結する俳句は、世界最短詩であり、老若男女を問わず、簡単に詩人になることができる。その時々に感じたことを素直に17音にし、楽しむことによって、森羅万象をより詳しく興味を持って観察する審美眼が身に付く。それが人生に大きな喜びと潤いをもたらしてくれる。俳句は、大いなる道楽(楽しみを追求する道)であり、本質は、写真や絵画と全く変わらない。 |
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びゃっこん
こ り
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白褌の波に洗わる秋の垢離 |
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見付天神裸祭 |
The autumnal purification,
white
loincloths being washed by the waves. |
平成21年(2009)9月23日(水)
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波の中の裸練り/一番觸(西区)の浜垢離(静岡県磐田市) |
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朝日新聞や讀賣新聞は、月曜日に俳壇を載せているので、毎週、楽しみに読んでいる。面白いのは、朝日は、全員の選者が投句を読み、その週の入選作を決めるため、複数の選者に選ばれた句には○が付く。しかし、○が付いた作品は殆どない。これは、人の評価は千差万別であり、優劣を決める基準がないということを示している。そのためか、讀賣は、選者を決めて投句させており、審査を受けるのは、一人の選者に限っている。同じ俳句をある選者は入選にし、別の選者は落選にする不合理をなくすためと思われる。 |
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しろふんどし
こ り
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秋の空白褌の浜の垢離 |
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見付天神裸祭 |
The autumn sky,
purification wearing a white loincloth at a beach. |
平成21年(2009)9月23日(水)
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波に打たれる子供連/遠州灘福田海岸(静岡県磐田市) |
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絵画や書道などは、ある程度審査員の好みに左右されることはあるが、技術や表現力、美意識など審査するポイントが沢山あるため、ブレが少ないが、俳句はたった17文字しかなく、固有名詞や季語を入れると、バリエーションは僅かで、審査するポイントが限りなく少ないため、評価のブレが大きくなるのであろう。所詮、俳句とはそのようなもので、審査には、公平さより、主観が大きいということを認めなければならない。つまり、作者が良いと思った句は、良い句であり、それに同意する人は、作者と同じ感性をもっているということである。 |
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かりぎぬふんどし |
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純白の狩衣褌秋の川 |
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若宮八幡裸祭 |
Autumnal river,
pure white are the kariginu coats and fundoshi loincloths. |
平成21年(2009)11月12日
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桂川のスロープを下る川組神輿/若宮八幡裸祭(大分県豊後高田市) |
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この道を我は歩かむ八重葎 |
このみちを われはあるかん やえむぐら |
Thick weeds, let me walk along this way. |
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北舟は、日本が世界に誇る伝統の俳句を始めて10余年になる。巧拙はともかく、子供でも分かる俳句に徹し、「継続は力なり」を心情として創作を続けてきた。「これなら私にもできる」と読者に感じて頂ける平易で分かりやすい句が北舟の目指す俳句である。もし、そのような感想をお持ち頂ければ、作者冥利に尽きる。 |
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かわと みこし ぬれふどし
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秋の夜の川渡神輿や濡褌 |
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River-crossing of the portable shrine,
the fundoshi loincloths got wet at autumn night.
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平成21年(2009)11月12日 |
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拡大写真(1800X1470)506KB |
最後の踏ん張り/若宮八幡裸祭(大分県豊後高田市) |
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internetで写真俳句を誰よりも早く始めたのは、和田北舟である。最初の発表は平成13年(2001)7月29日(日)の下の句で、当時、私以外にやっていた人は存在しない。internetの「はてなキーワード」の「写真俳句」の解説では、平成17年(2005)11月に発売された「森村誠一の写真俳句のすすめ」という本を表示して、
「写真俳句は作家の森村誠一先生が散歩中に考え出したモノ」となっているが、これは誤りである。この手の解説は、フリー百科事典同様、会員が勝手に書き込むらしく、不十分な調査による無責任な解説である。 |
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正確に説明すると、彼が始めたのは、一般から募集し、写真俳句として発表するというフォーラムと、写真俳句として
本を出版したということである。 |
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島影に舷燈点る夏の夕 |
Navigational lights appeared
around the distant islands
in the summer
evening. |
小長い夏の日が終わり、夕暮れ時になってきた。島影がシルエットになってくる。あちらにぽつり、こちらにぽつりと、船の舷灯が灯り始めた。瀬戸内海に海風が吹き始め、やっと涼しい夜が訪れる。 |
広島県広島市 平成12年(2000)7月22日(土) |
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また、英訳写真俳句も北舟が初めてで、始めた日は写真俳句と同じ日である。「英訳写真俳句」という言葉は北舟の造語であり、Googleで「英訳写真俳句」を検索すると、2011.5.28 時点で私のサイト以外にはヒットしないことからも明らかである。 |
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本来、自己宣伝をするのは気が引けるが、誰かがいい加減なことを書き込むと、それが真実のように広まってしまうのがinternetの欠点なので、ここに説明させて頂いた。internetは仮名(ハンドルネーム)による無責任なサイトが多く、玉石混淆の大海である。有識者の署名入の記事が殆どなく、真実を見つけるのは容易ではない。 |
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白褌の鳥居くぐりや秋神輿 |
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Portable shrine in the autumn,
men of white loincloths passing under the torii.
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緒方三社川越しまつり |
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編集後記 |
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奇しくも2010年8月15日(日)の終戦記念日に、初めての英訳写真俳句「白褌 BYAKKON 」が完成した。今年が日韓併合から100年にあたることや、核廃絶への言及が報道されるなか、過去10年間に思うままに詠んだ1300句からベスト版を編集する作業は大変だったが、何とか夏休みの間に仕上げることができた。まるで子供が宿題をぎりぎりに仕上げるようなものだった。 |
戦後生まれの団塊の世代に属する筆者が終戦から65年後の今日まで、戦争のない平和な日本に暮らし、好きなことをとことん追求して道楽を極めることができた幸運に感謝したい。 |
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びゃっこん
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急流に挑む白褌秋神輿 |
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緒方三社川越しまつり |
Portable shrine in the autumn,
men of white loincloths challenging the rapid current. |
平成21年(2009)12月15日
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拡大写真(1800X1500)335KB |
鏡のような岩盤を行く神輿/緒方三社(大分県豊後大野市) |
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旅に生き、旅に死んだ芭蕉が活躍した江戸時代は、どこに行くにしても、徒歩か、人力や風を頼りの船旅で、ときはゆるやかに流れていた。岩波文庫の「芭蕉俳句集」を読むと、蚤虱(のみ・しらみ)に悩まされる粗末な宿や野宿などの経験が詠み込まれている。追いはぎや山賊に会ったり、病に斃れるリスクも高く、旅に出るには相当の覚悟が必要だった。 |
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火柱に染まる白褌どんど燃ゆ |
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Dondo bonfire burning,
White fundoshi loincloths being dyed by the pillar of frames. |
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鷹栖観音鬼会 |
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北舟が生きる現代は、日本の庶民が初めて旅客機や新幹線などの高速輸送機関を手軽に利用できるようになった最初の世代といえる。ざっと計算しても、北舟はこれまでに出張を含めて地球10周(4万kmX10=40万km)は旅している。江戸時代なら半月以上もかかる旅が新幹線を利用すれば日帰りで行ける。日本全国、世界各国に旅しても、冷暖房を完備した清潔な宿に手軽に泊まることができる。 |
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こん
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初春や夜川に栄ゆる褌の白 |
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鷹栖観音鬼会 |
The New Year, white loincloths
noticeable to the night river. |
平成21年(2009)1月4日(日) |
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拡大写真(1400X1150)239KB |
松明を手に駅館川を渡る裸男たち/鷹栖観音鬼会(大分県宇佐市) |
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江戸時代の講や先達(せんだち)に当たる旅行代理店や添乗員を利用すれば、煩雑な旅の手配に忙殺されることもない。たった10年でバラエティ豊かな世界旅を満喫し、幅広い視野で吟行が可能となった現代の日本は、本当に有り難い社会であり、芭蕉が現代にタイムスリップしたらびっくり仰天(ぎょうてん)することだろう。 |
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みそぎ ぬ ふんどし かんもうで
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禊して濡れ褌の寒詣 |
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鐵砲洲寒中水浴 |
Winter visit to the shrine,
wearing a wet loincloth after ablutions. |
平成22年(2010)1月10日(日) |
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拡大写真(1600x1067)271KB |
水浴和田グループの参拝(第55回鐵砲洲稲荷神社寒中水浴大会/東京都中央区湊一丁目) |
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俳句のアンソロジー(句集)とは云いながら、これは筆者が歩いてきた10年の足跡であり、自分史そのものである。よくもこれだけの旅を続け、写真を撮り、俳句を詠んだものだと、我ながら感心する。 |
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歳ひとつ重ねて白褌寒の垢離 |
としひとつ かさねてびゃっこん かんのこり |
Winter water ablution,
white loincloth
aging a year. |
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この句は、平成22年(2010)1月10日(日)、東京都中央区湊一丁目に鎮座する鐵砲洲稲荷神社で和田グループ17名の代表として、六十の還暦赤褌水浴以来3回目の寒中水浴をしたときのもの。写真上は、禊を終えた直後、濡れたままの姿でグループ全員が神殿に向かって二礼二拍手一礼の参拝をしているところである。 |
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平然としているようだが、寒さで足に震えが来ていた。齢(よわい)六十三となり、体力的に衰えを自覚しはじめているが、できればあと十年、気力・体力・財力の続く限り、ロマンと感動を求めて世界の旅を続けて行きたい。引き続き、読者の皆様方のご支援ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げる。 〈 完 〉 2010.8.15 和田義男 |
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Wa☆Daフォトギャラリー10周年 記念作品 第
5弾! |
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Wa☆Daフォトギャラリー 第431集 北舟の英訳写真俳句 「白褌 BYAKKON 」 |
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企画・制作 : 和田義男 |
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平成22年(2010)8月15日 作品:第22作 画像:(大394+小26)(再掲) 頁数:13 俳句:600句(うち褌句138)(再掲)
平成12年(2000)〜平成22年(2010) 作品数:370 頁数:1,434 ファイル数:58,767 ファイル容量:8,546MB |
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